2023労働条件闘争では既報のとおり、賃金以外の総合的な労働条件の改善についても着実に進展しています。本紙では、加盟組合の事例を随時紹介しています。今号は、ちよだ鮨労働組合(総合サービス部門、総合すし店、東京、2100名)です。

スキル給の増額で一層の活躍を ちよだ鮨労働組合(総合サービス部門)

ちよだ鮨は、“新鮮でおいしい本格江戸前すしを手ごろな価格で多くのお客さまに召し上がっていただく”をモットーに、首都圏を中心に189店舗のすし店(主に持ち帰り)を展開している。
ちよだ鮨労働組合は、2023労働条件闘争でパートタイマーの処遇改善として、本年10月からスキル給の増額(時間当たり35~100円)、および傷病積立有給休暇制度(失効した年次有給休暇を積み立てて、病気の療養やけがの治療などに利用)の適用拡大の成果を上げた。

作業力の向上に見合う評価・処遇

具体的に、スキル給の増額については作業力評価制度「カルテチェック」により、「プラチナ」評価(100点以上)の場合は、これまでの50円加給から150円加給(100円増)へ。また、「ゴールド」評価(80~99点)では、25円加給から100円加給(75円増)。「ブロンズ」評価(70~79点)は15円加給から50円加給(35円増)となった。
植木善久委員長は、「職場ではパートの仲間達が約8割を占め、お店を支えてくれています。私自身、これまで店長などを経験するなかで多くのパートの仲間に助けてもらいました。それゆえ、皆さんの職場環境を改善したいという思いを強く持っていました」と語る。さらに、「とりわけ作業力評価制度で、最大(プラチナ評価)で50円しか上がらず、これに魅力を感じない多くの仲間がいたことに問題意識を持っていました。そのため、努力して作業力を向上した仲間には、それに見合った評価・処遇を受けられる環境をつくりたいと思いました」と続ける。

そして、労働組合は2020労働条件闘争で本評価制度の改善を目ざして会社との交渉をスタート。3年にわたる交渉の結果、今春の2023労働条件闘争で加給金額の大幅改定を実現した。
植木委員長は評価制度の改定について、「大変うれしく思います。一人ひとりが能力向上にチャレンジすれば、会社全体の作業力が向上します。そして、能力の向上に見合って時間給がアップすることにより、仲間にとっては収入だけでなくモチベーションも上がります。このように評価制度の改善は会社と仲間双方に大きなメリットをもたらすことになります」と思いを込める。
このたびの評価制度の改正で、「プラチナ」評価の場合、週35時間契約の仲間は、月当たり約1万5500円の収入アップが見込まれるそうだ。

【パート】傷病積立有給休暇制度の適用へ

病気やケガに対する不安や悩みを解消

傷病積立有給休暇制度については、2015労働条件闘争で初めて制度創設を要求した。「当時、私は組合の執行部として活動していましたが、病気やケガで長期にわたって休職せざるを得ない仲間達がいました。そんな仲間達から、休職(無給)によって収入が減り、生活が厳しいという声が寄せられていました。
加えて、年次有給休暇を使い切れず、毎年消滅しているという仲間の声も聞かれました。そこで、傷病積立有給休暇制度を創設し、仲間の病気への不安やストレス、治療費の心配などを少しでも解消したいという思いが強くなりました」と、植木委員長は振り返る。そして、仕事と療養・治療を両立できる環境づくりへ向け、会社と交渉を継続してきた。
その結果、2022労働条件闘争で正社員に対する傷病積立有給休暇制度の創設(初年度の積立上限10日、最大20日まで)を実現することができた。とはいえ、パートの仲間達も同じ不安や悩みを抱えており、2023労働条件闘争でパートの仲間達への適用拡大を会社に要求。このたび実現を果たした。
労働組合では、今回の成果について組合ニュースなどをつうじて周知をはかっており、仲間達からよろこびの声が数多く届いているという。

「シャポー小岩店」(東京都江戸川区)の外観
「シャポー小岩店」(東京都江戸川区)の外観

ダイバーシティの取り組み推進へ

今後は、ダイバーシティ(多様性)の取り組みを進めていきたいという。具体的には、育児や介護と仕事が両立できる働きやすい職場づくりへ向け、子の看護休暇と介護休暇を「特別有給」として取得できるようにしていきたいと意欲を示す。さらに、育児時短勤務制度の適用期間延長や、男性の育児休暇取得促進などにも取り組んでいきたいと語る。
最後に「仲間の皆さんに“ちよだ鮨で働いて良かった”と思ってもらえるように環境を整えていきます」と語る植木委員長。仲間の思いを胸に、労働条件の改善や職場環境の整備などへ着実に取り組みを進めている。