組合員の声を政策に反映し、「年収の壁」解消の実現へ

9月27日、政府は年収が一定額を超えることで扶養から外れ、社会保険料等の負担が生じる「年収の壁」に対し、パート等の短時間労働者が「年収の壁」を意識せずに働けるように、支援強化パッケージ(別項)を発表。これをふまえ、この間、国会質問などをつうじ、「年収の壁」問題に力を注いでいる田村まみ組織内参議院議員にこれまでの成果や思い、今後へ向けた決意を聴きました。インタビューの内容を紹介します。

田村議員の質問が政府を動かすことに

  「年収の壁」問題について、政府が支援強化パッケージを発表しました。田村議員の度重なる質問や要請が実った結果です。

田村 本来、私や川合孝典組織内参議院議員は「年収の壁」に関し、“抜本的な改革”を求めてきました。一方で、私達の質問をきっかけに、この問題が「社会の問題」となり、政府の対応につながったことは意義深いと思います。

   この間、「年収の壁」問題を国会で取り上げてこられましたが、国会での反応に変化はありましたか。

田村 25年前に私がジャスコ(現イオン)に入社した当時は配偶者控除の「103万円の壁」がありました(2018年に制度変更)。毎年、年末近くなると「壁」を意識して就業調整をされる方も多かったです。そのころは、職場の潜在的な「困りごと」として「壁」がある一方で、流通やサービス業の従業員の声が国会に届けられる機会は少なかったです。その後、2022年に川合議員と「年収の壁」を国会で取り上げたときは、ちょうど101人以上の事業所に社会保険が適用拡大される時期と重なり、社会の注目を集めました。こうした時期に国会質問ができた意味は大きかったと思います。

   田村議員は国会質問のなかで、現場の組合員の声を頻繁に引用されています。具体的にはどのような声が寄せられていますか。

田村 例えば、「壁」の範囲内で働く方からは「せっかく時給を上げてもらったのに、働く時間を短くしなければならないので申し訳ない」という声があります。また、店長を務める方からは「本人の頑張りを評価したのに、働いてもらえなくなる」といった悩み、周囲の同僚からは「人手不足なのに、だれがこの仕事を補うんだろう」といった不安が寄せられています。

社会全体を見据えた本質的な課題解決を

   今回の支援強化パッケージをどのように評価されますか。

田村 このパッケージだけでは“根本的な解決”にはならないと思います。これは、あくまで目先の労働力確保のための施策です。

   では、今後、どのような政策実現が必要だと思いますか。

田村まみインタビュー

田村 いま、「年収の壁」という言葉は、社会の注目を集めています。一方で、当事者からすると、ある時点で収入が大きく減ってしまうという意味でこれは「崖」に感じていると思います。「崖」を超えるためには、心理的なハードルを軽減しなければいけません。もちろん、収入の減少という生活の激変を緩和する措置も必要です。「壁」を超え、労働時間を延ばすという意味では、子育てや介護といった家庭内労働の分担・軽減といった視点も重要です。

   「年収の壁」はさまざまな課題と関係し、全体を見据えた政策実現が必要ということですか。

田村 社会保障制度は社会全体と関係します。社会のあり方と合わせて、制度を変える必要があります。いま、介護や保育の現場では、処遇改善が進まず、人手不足の状態が続いています。本当の意味で「年収の壁」を解消すればこの課題の解決につながります。また、社会保険料の担い手が増えるという意味では、医療費削減の影響を受ける薬価の問題とも直結します。

“国会に現場の状況を届けたい”

   「今後、「年収の壁」問題にどのように取り組んでいきたいですか。

田村 いま、国会に一番足りないのは「年収の壁」に悩む「当事者の声」です。人手不足の解消といった視点だけでなく、一人ひとりの事情に焦点を当てた政策実現が必要です。組合員の皆さんの声を聴き、今回のパッケージをより良いものに改善し、「年収の壁」を意識せずに働ける環境の実現に声を上げていきたいと思います。