厚生労働省は精神障害・自殺事案に関する労働災害について「心理的負荷による精神障害の認定基準」の改正を行い、心理的負荷の要素として新たにカスタマーハラスメントを追加しました(9月1日施行)。加盟組合は改正内容を労使で共有し、メンタルヘルス対策の補強につなげましょう。
厚生労働省は精神障害・自殺事案に関する労働災害について、これまでは2011年に策定の「心理的負荷による精神障害の認定基準について」にもとづき認定を行ってきました。このたび「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」の報告をふまえ労災認定基準が改正され、新たな基準がことし9月1日に施行されました。
改正ポイントは三つ。一つは、「業務による心理的負荷評価表」(別掲)が見直され、同表に記載の「具体的出来事」に「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスタマーハラスメント)と「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」が追加されました。また、心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例が拡充され、パワーハラスメントの6類型(身体的・精神的攻撃、切り離し、過大・過少な要求、個の侵害)すべての具体例等が明記されました。
二つ目は、「精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲」が見直され、悪化前おおむね6カ月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性が認められることになりました。
三つ目は、「医学意見の収集方法」が効率化され、専門医3名の合議により決定していた事案について、とくに困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更されました。
このことにより、より適切な労災認定、さらに審査の迅速化、請求の容易化が可能となります。加盟組合は衛生委員会などで改正内容を労使で共有し、メンタルヘルス対策をさらに充実させていきましょう。
業務による心理的負荷評価表 精神障害の労災認定の際に指標となる表。発病前6カ月間の業務による出来事が、同表に例示される「特別な出来事」やそれ以外の「具体的出来事」のどれに当てはまるかを判断し、心理的負荷の強度を「強」「中」「弱」の三段階で評価する。
<認定基準改正のポイント>
①業務による心理的負荷評価表の見直し
●「具体的出来事」に以下の二つを追加
「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」(いわゆるカスハラ)
「感染症等の病気や事故の危険性が高い業務に従事した」
●心理的負荷の強度が「強」「中」「弱」となる具体例を拡充(パワハラ6類型すべての具体例を明記等)
②精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲を見直し
悪化前おおむね6カ月以内に「特別な出来事」がない場合でも、「業務による強い心理的負荷」により悪化したときには、悪化した部分について業務起因性を認める。
③医学意見の収集方法を効率化
専門医3名の合議により決定していた事案について、とくに困難なものを除き1名の意見で決定できるよう変更。