優勝 小野 久美子 さん(全東レ労連東レ労働組合滋賀支部)

UAゼンセンは7月22日、第73回「私の主張」全国大会を青森県青森市で開催。ブロック代表8名が熱い思いを披露しました。審査(審査員長=古川大書記長)の結果、近畿ブロック代表(滋賀県支部)の小野久美子さん(東レ労働組合滋賀支部)が優勝に輝きました。

小野 久美子さん (全東レ労連東レ労働組合滋賀支部)

ことしの「私の主張」は昨年より多い計182名が出場。そのなかから支部・ブロック大会を勝ち抜いた8名の弁士が全国大会に進出しました。大会の模様はWebでライブ配信し、弁士達は、会場に駆けつけた約80名の聴衆や多数のオンライン視聴者が見守るなか、全国の仲間達へ熱い思いを訴えました。
優勝した小野さんは、児童手当の所得制限に矛盾を感じ投稿したSNSで批判を浴び、声を上げることに恐怖を感じるように。そこから奮起し、田村まみ組織内参議院議員の助言を仰ぎながら、有志の仲間と共に所得制限撤廃の主張を展開し続け、政府方針に影響を与えるまでになりました。仲間の声を集めて世の中に影響を与えた経験をつうじ、声を上げる勇気を持とうと訴え、共感を呼びました。今回は、声を上げる勇気や仲間とのつながりの大切さを訴えた主張が多いのが印象的でした。

≪審査結果≫
【優勝】小野久美子(東レ労働組合滋賀・滋賀)「声を上げる勇気」【準優勝】藤井汐海(東レ労働組合岡崎・愛知)「想像する」【第3位】米沢喜代美(ウオロク労働組合・新潟)「声を上げれば未来が変わる」【敢闘賞】網代奈津子(日東紡績労働組合福島・福島)「成長は自信への後押し」、星野紋子(サイゼリヤユニオン・埼玉)「私を受け入れてくれた場所」、谷岡知明(武田薬品労働組合光大阪工場・山口)「ボランティアを制する者は人生を制す」、堀のぞみ(帝人労働組合松山・愛媛)「私が『私の主張』を引き受けた理由」、山下美恋(イオン九州ユニオン・鹿児島)「『なりたい私』に出会える職場へ」(敬称・労連名略)

第73回「私の主張」 優勝論文

論題 「声を上げる勇気」

近畿ブロック代表 全東レ労連 東レ労働組合滋賀支部 小野 久美子 さん

「おめでとう」。1通のLINEが届きました。送り主は田村まみ組織内参議院議員。
入社時「なんで東レでは選挙活動をするのだろう。面倒だな」、そう思っていた私にいまでは議員からラインが届きます。きっかけは、「声を上げた」ことです。

2020年。第四子育休中だった私はニュースを見てショックを受けていました。年収が一定額以上の家庭への、児童手当廃止案が出されたのです。廃止で浮いたお金は待機児童解消の財源にするとのこと。「一生懸命頑張って働いて、子供4人も育てて、なぜ私達が財源扱いされなければならないの?」。思わずSNSで叫びました。次にSNSを開いたとき、目に入ったのは、見たこともない量のコメント。大半は共感でしたが、一部に心ない意見もあり思いました。「声を上げるって怖い」。
非難が怖く、モヤモヤするのになにもできない日々。そんな日々を変える出来事が二つ起こりました。
一つ目は、たった一人で署名活動を始めすでに4万筆以上を集め、近々大臣に提出すると言う方との出会い。そして二つ目は、私がアンケートに書いたことを議員が国会で取り上げてくれたことです。「個人でできることもある。思いを届けてくれる人もいる。モヤモヤしているだけじゃ変わらない。もう一度声を上げてみよう」。

声を上げるのをあきらめてから1カ月経った2020年の年末。今度は論理立てて制度の矛盾を主張することにしました。調べると、いまの児童手当は、子供の扶養控除、すなわち、子供がいる家庭への減税(所得控除)に代わる制度とのこと。扶養控除による減税は「最低限の生活費分の所得には課税しない」という趣旨のもので、大人の扶養を対象にしたものさえあります。それなのに、働くことのできない子供の扶養を対象とする減税や代わりの手当がないのはおかしいです。所得制限による手当の廃止により、場合によっては手取り収入が逆転し、働き損になるのもおかしいです。こうして論理立てて発信すると、徐々に賛同の声が増えていくのを肌で感じました。
けれども結局法案は可決され、一部のお子さんを持つ家庭は、減税も代わりの手当もないという状況になりました。「頑張って声を上げても、無駄なのかな」。落胆したのをよく覚えています。

しかし、1年後、転機が訪れました。子供1人当たり10万円を給付するコロナ禍での「未来応援給付」でも所得制限が設けられることになったときのことです。勇気を持って再発信した1年前のSNS「一生懸命頑張って働いて…なぜ私達が…」をつうじ、所得制限へのモヤモヤとなにもできない悔しさの声がたくさん届いたのです。そこで「子供の支援は一律に」を合言葉に、有志で集まり団体をつくることにしました。 
活動に際しUAゼンセンの組織内議員に助言を求めました。田村議員とはオンラインで意見交換し、問題点を広く知ってもらう必要性や取り組み方に関するアドバイスをいただきました。そして、SNS発信のほか要望事項の提出、新たな署名の立ち上げと提出、アンケート、記者会見、取材対応など実にさまざまな形で声を上げ続けました。田村議員の励ましもいただきつつ、1年以上ずっと。その結果、新たな「異次元の少子化対策たたき台」に、ずっと訴えてきた「児童手当の所得制限撤廃」が載ったのです!。そう、冒頭の田村議員からのLINEは、「進みそうで良かったね!」というもの。「あきらめずに訴えてくれた皆さんがいたからだよ」、そう言われる議員や教授もいました。「無駄じゃなかった」と、涙しました。

今回関わった議員の方々が共通して口にされていたこと。それが「声を上げること」です。「世論が盛り上がらないと、世の中は動かない」「組合経由で良いから、困っていることは伝えてほしい」と話されていました。今回、身をもって「声を上げる」重要性を実感しました。
声を上げるのはとても勇気がいることです。なにも変わらないなら、リスクを冒してまで声を上げたいとは思わないかもしれません。実際、私もそうでした。
でも、モヤモヤがあるならば、少しだけ勇気を出して、声を上げてみてほしいのです。同じようにモヤモヤしている仲間がきっといます。少しの勇気がだれかの目や耳に入り、大きな影響力を持つことも十分あります。私のアンケート記述が国会で取り上げられたように。一人ひとりの発信が集まり、やがて団体となり、できることが増え、政府の方針に少しでも影響を与えられたように。
難しければ、アンケートに答えたり、SNSで拡散したりするだけでも構いません。それらが積み重なれば注目を集め、やがて世論となり世の中を動かす可能性だってあります。
「児童手当の所得制限撤廃」はまだ方針の段階です。今後も、われわれ働く人達の頑張りが報われるような形での実現を目ざし、声を上げ続けます。