なんとしても物価上昇を上回る賃金引き上げを獲得するため、UAゼンセンが開催した賃上げ交渉推進へ向けた4つのセミナーを紹介します。各セミナーの資料および動画はUAゼンセンホームページ(メンバーズ)に掲載しています。

Ⅰ.賃金闘争推進セミナー

2023賃金闘争は30年ぶりの高い賃上げ率となったものの、物価の上昇には追いつかず、実質賃金のマイナスが続いています。2024年の賃上げが十分ではなく、実質賃金のマイナスが続くようであれば、消費は減退し、長期の経済停滞からの脱却のチャンスを逃してしまいます。これを阻止するためにも、ことしは昨年以上の賃上げを獲得しなければなりません。

本セミナーでは、2024賃金闘争へ向け、団体交渉に当たっての主張点を整理・解説します。
重要なのは、労使ともに「5つの思い込み」から脱却することです。
第1の思い込み「賃上げは自社の支払い能力に応じて行うもの。マクロ経済は関係ない」については、賃金はマクロ経済の実情に応じて形成される世間相場の幅のなかで、産業の状況や個別企業の事情を一定程度反映して決定されているのが現実であり、関連性はあると言えます。
第2の思い込み「世間相場をふまえたベースアップは、結局のところ大手準拠であり、中小企業には無理」については、世間相場が中小企業も含めた社会全体でつくり上げていくものである以上、〝ついていけない〟という言い訳は成り立ちません。

団体交渉時の主張点(抜粋)014
団体交渉時の主張点(抜粋)02

第3の思い込み「支払い能力=ないもの」については、本当に支払い能力がないのかはデータにもとづいて判断するべきものです。
第4の思い込み「資源・エネルギー価格の高騰が業績を圧迫」については、これが事実であるなら売上高営業利益率が低下するはずですが、実際はコロナ禍前を上回る状況です。
第5の思い込み「厳しい解雇規制、右肩上がりの賃金カーブのもとでは、ベースアップは困難」については、例えば整理解雇のしやすさを取り上げると、日本は米国よりは厳しいけれど欧州並みであり、構造的な賃上げや成長と分配の好循環が極めて重要という現在の局面とは相容れないものだといえます。


Ⅱ.「労務費の適切な転嫁のための 価格交渉に関する指針」に関わる労使セミナー

中小企業での賃上げを実現するためには、賃上げ原資の確保へ向けて、労務費等を適切に価格転嫁できる環境の整備が必要です。適切な価格転嫁の推進に関しては、発注側・受注側双方の企業における労働組合も企業や社会の意識を変えるために、正しい理解にもとづき、積極的に声を上げる必要があります。

本年1月に中小企業庁が公表した「価格交渉促進月間フォローアップ調査」では、2023年9月時点の価格転嫁の状況について、同年3月時点と比較し、「発注側企業から交渉の申し入れがあり、価格交渉が行われた」割合は概ね倍増しており、価格交渉が実施できる雰囲気は醸成されつつあることが明らかになっています。
一方、UAゼンセン製造産業部門が所属組合を対象に実施した「価格転嫁の状況等に関する調査」(2023年12月~2024年1月)」では、本年1月18日時点で173組合の回答を集約。そのなかで、「労務費の価格転嫁率は20%未満」という回答が最も多くて全体の29%を占め、「全くコストアップできていない」という回答も22%あり、加盟組合労使において価格転嫁率の向上に大きな課題があることが示されています。

このような状況をふまえ、昨年11月に政府が発表した「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の周知徹底に取り組みます。組合員による“労働の成果”を適正価格で販売することにより、賃上げの原資を確保し、物価上昇を上回る賃上げを実現しましょう。

「労務費の適切な転嫁のための
      価格交渉に関する指針」(抜粋)

Ⅲ.「賃上げ促進税制活用」労使セミナー

2024賃金闘争では、持続的な賃上げの流れを中小企業全体に波及させることが重要です。
現在、政府は2024年夏を目途に、物価上昇を上回る実質賃金の伸びを実現し、日本経済のデフレ脱却を確実なものとするための環境整備を推進しています。その一環として、中小企業における賃上げや生産性向上に資する税制等を拡充し、中堅企業(=従業員2000名以下の企業。本年新設された定義)から中小企業までの幅広い賃上げの実現を後押ししています。

「賃上げ促進税制」ならびに「中小企業省力化投資補助事業」の内容を労使で共有し、積極的に活用することで、昨年を上回る賃上げの実現へ向けて、労使一丸となって取り組みましょう。

賃上げ促進に資する
税制等の支援制度(概要)01
賃上げ促進に資する
税制等の支援制度(概要)


Ⅳ.キャリアアップ助成金活用労使セミナー

法定最低賃金の引き上げや労使交渉によって短時間組合員の時間賃金が上昇する一方で、「年収の壁」による就業調整などで年収は増えず、職場では人材不足に拍車がかかっています。
UAゼンセンは、労働者が希望するとおりに働く時間を選択でき、職場で能力発揮ができるように、労使で就業調整問題の改善や短時間組合員の社会保険の適用拡大へ取り組みを進めていくとしており、そのなかでキャリアアップ助成金の活用を促進しています。
具体的には、ベースアップの実施に対して助成を受けられる「賃金規定等改定コース」に加え、労働時間の延長により新たに社会保険に加入する労働者の保険料負担分に対して助成を受けられる「社会保険適用時処遇改善コース」の両方を活用するように提案しています。

キャリアアップ助成金活用モデル

社会保険の適用拡大を進めるには、賃上げによって社会保険の適用対象となる見込みの組合員に対して正確な情報を十分に説明し、今後の働き方について考えてもらう必要があります。
労使が協力して進めていけるよう、方向性を協議し共有することから始めましょう。