私達の生命と暮らしを支える食品関連産業では、「優越的地位の濫用(らんよう)行為」の改善が取引現場における課題となっています。これに対し、2003年からUAゼンセンとフード連合は共同で「取引慣行に関する実態調査」を実施しています。今号では、本実態調査にもとづき4省庁(公正取引委員会、中小企業庁、農林水産省、消費者庁)へ行った要請の内容を紹介します。
【写真】公正取引委員会で要請書を手交する松浦昭彦UAゼンセン会長(中央)
川合孝典組織内参議院議員とともに訴え
「優越的地位の濫用行為」撲滅へ
食品関連産業で適正な価格転嫁を
食品関連産業は、安全・安心な食品を安定的に供給することで、私達の生命と豊かで健康な暮らしを支えています。
一方、この間に新型コロナ感染拡大や著しい物価高騰のもとで、事業者が消費者の買い控えを懸念し、コストの増加を適正に価格転嫁できていない状況があります。加えて、食品の取引現場においては「押付販売」など「優越的地位の濫用行為」も深刻な課題となっています。
これらをふまえ、UAゼンセンは2003年から毎年、フード連合(食品関連産業の労働者が集まる産業別労働組合。連合加盟。組合員は約11万名)と合同で「取引慣行に関する実態調査」を実施。加盟組合の組合員(営業担当者)を対象に、取引現場での事例収集を行っています。
今回の実態調査では81社から4257件の回答があり、3135事例を集約しました。
現場の〝実態〟を伝え省庁の活動を後押し
2月13日、UAゼンセンはフード連合とともに、実態調査の結果をふまえ、公正取引委員会と中小企業庁に「公正な取引慣行の実現」、農林水産省に「食品製造業と小売業の適正取引の推進」、消費者庁に「食の安全・安心の推進」をそれぞれ要請しました(別項)。
公正取引委員会では、川合孝典組織内参議院議員が「適正な価格転嫁の実現のために、今回の調査結果を生かしてほしい」と提起。重ねて「『なにが優越的地位の濫用行為なのか』の情報発信を徹底すべき」と訴えました。これに対し、小林渉事務総長は「引き続き環境整備に取り組む」と回答しました。
続く中小企業庁では、松浦昭彦UAゼンセン会長が「サプライチェーン全体の適正な価格転嫁の実現に、関係省庁で連携して対応してほしい」と要請。これに対し、善明岳大事業環境部取引課長補佐は「共有いただいた実態を、今後の調査などに生かしていきたい」と回答しました。
また、今回初となる農林水産省への要請では、原田光康UAゼンセン総合サービス部門事務局長が「外食産業でも価格転嫁が必要。後押しをお願いしたい」と強調。対応した吉松亨大臣官房参事官は「改めて取引慣行の是正に取り組みたい」と回答しました。
最後に、消費者庁では、細矢博之UAゼンセン総合サービス部門・フード部会長(全プリマハム労組委員長)が「食品の安全・安心の確保の前提として、適正な価格転嫁が必須ということに対する消費者の理解促進が必要である」と訴えました。対応した山地あつ子消費者教育推進課長は、「いただいた観点をふまえ、情報発信していきたい」と回答しました。
「優越的地位の濫用とは?」
自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用し、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為のこと。具体的には、合理的な根拠のない価格決定や物の購入強制(押付販売)、不当な返品などが該当する。これらの行為は、独占禁止法で不公正な取引方法の一類型として禁止されている。