UAゼンセン製造産業部門では、加盟組合における賃上げ原資の確保を目ざし、2023年以降、これまで6回にわたって、「価格転嫁の状況等に関する調査」を実施。価格転嫁の実態を把握し、調査結果にもとづき、各種要請・世論喚起に取り組んでいます。今号では、昨年8月に実施した第6回調査結果を報告します。
UAゼンセン製造産業部門では、2023年から高水準の賃上げが続いています。
一方で、組合規模別に賃上げ総額を比較すると、組合規模が小さくなるにしたがって妥結金額が下がり、3年間で賃上げ結果に大きな差が生じています。とくに、300人未満の組合についてベースアップを含む賃金引き上げ分の率を見ると、3年連続で前年度の物価上昇率を下回っており、実質賃金の低下に歯止めがかかっていない状況があります。
価格転嫁とは?
原材料費、エネルギー価格、労務費などのコスト上昇分を、企業間の取引価格や販売する商品やサービスの価格に上乗せして反映させること。インフレ下で利益を確保し、賃上げの原資を確保するために不可欠な企業戦略であり、政府も指針を策定し推進しています。
今後も、物価上昇を上回る賃上げを継続していくためには、コスト上昇分を適切に価格転嫁し、適正な取引価格を実現していく必要があります。今回の第6回調査では、下記のとおり、加盟組合における価格転嫁の状況が明らかとなりました。
Ⅰ.コストアップの状況
上昇したコストを反映し適正な取引価格の実現へ
◇過去すべての調査において、およそ90%が「コストが上昇した」と回答。一方、「変わらない」という回答についても、多くの場合は、コストの「高止まり」状態が推察される。
◇コストアップの状況を要素別に見ると、エネルギーコストは多少の落ち着きが見られる。他方、労務費上昇の割合が高くなっており、2023年から3年間の大幅な賃上げが大きく影響している。「輸送費」や「外注費」についても、賃上げの間接的な影響が考えられる。
◇労務費上昇の要因で最も多い回答は「物価高に対応した賃金の引き上げ」。また、この数年の地域別最低賃金の大幅な上昇を受け、「最低賃金の引き上げ」という回答の割合が上昇している。
◇中小企業ほど、「最低賃金の改定」「従業員流出防止のための防衛的賃上げ」の割合が高く、大企業ほど「採用競争力強化のための初任給改定」「企業成長を見据えた賃上げ」の割合が高い。
◇賃上げ原資について、「価格転嫁が進展した」という回答が増加。逆に「企業からの持ち出し」は減少。適正な価格転嫁の必要性はある程度、浸透しているがいまだ不十分な状態にある。
◇100人未満の企業では、「助成金の活用」という回答が0%。中小企業ほど助成制度の活用に課題がある。
Ⅱ.価格転嫁の状況
商慣習の見直しをつうじてより一層価格転嫁を推進する
◇労務費、原材料費、エネルギーコストなど、各要素について、半数以上が80%以上の価格転嫁を受け入れられている。しかし、上昇し続ける製造コストのすべてが転嫁できているわけではなく、とくに労務費の価格転嫁は厳しい状況。
◇受注者の立場から、価格交渉の申し入れを実施した企業は64%。一方で、発注者として交渉を受け入れた割合は78%。「受注減につながる」「受注を打ち切られる可能性がある」といった事情から申し入れを行えないといった受注者側の抱える課題が明らかとなった。
◇「労務費の上昇は企業努力で吸収するべきという考え」が過去すべての調査において最多。業界内の根強い商慣習が推察される。なお、企業規模が大きくなるほどその割合が高くなる。
Ⅲ.政府の取り組みに対して
各種助成制度の活用促進をはかる
◇公正取引委員会「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」(2023年11月発表)について、75%が「知っている」と回答。また、このうち6割弱が「交渉に役立った」と回答している。
◇しかし、企業規模が小さくなるほど、指針の認知度が低くなる。最も指針の活用が必要であるはずの中小・零細企業に対して十分に周知されていない現状がある。
◇「政府に対する意見・要望」としては、「消費者を含めた社会全体での理解に課題がある」「最低賃金の大幅な上昇によって、企業の労務費負担が大きくなっており、さらなる助成が必要」「医薬品・医療機器は公定価格が設定されており、物価上昇を適正に反映できる仕組みを構築すべき」などの回答があった。
UAゼンセン製造産業部門では、引き続き、本調査結果にもとづく各種要請活動や世論喚起の取り組みを推進していきます。本調査結果については、労組役員用メンバーズサイトからダウンロードできます。ご活用ください。
【トップ写真】昨年12月、中小企業庁担当者に本調査結果を手交する直塚政之製造産業部門長(右から2人目)。製造産業部門は、本調査をふまえ要請活動を積極的に展開中
