仕事や組合活動にイキイキと取り組んでいる女性達を紹介している連載「UAゼンセンなでしこジャパン」。今号は、ケーズホールディングスユニオン(川瀬武彦委員長、1997年結成、本部茨城県、約3400名)で副委員長を務める橋本真純さんです。家電量販店「ケーズデンキ川越店(埼玉県)」のPC売場でパートタイマーとして親切ていねいな接客に努める傍ら、持ち前のバイタリティーと明るさを生かし労働組合で活躍。職場環境の改善や情報宣伝活動などに取り組んでいます。
はしもと ますみ。1977(昭和52)年2月生まれ。埼玉県川越市出身。2007年からケーズデンキ川越店内のパソコン修理コーナーで勤務。その後、高度な商品知識と親しみやすい人柄が評価され2010年にPC売場担当に異動となる。初心者からマニアまで幅広いお客さまから支持を得て、店内トップクラスの販売成績を収める。ケーズホールディングスユニオンでは役員を歴任。現在は副委員長として専従役員と連携をはかりながら組織をリードする。多趣味でスポーツ万能。モットーは「笑う門には福来たる」。
お客さま一人ひとりに寄り添い 家電製品選びをサポートする
PC売場で生きいき働く傍ら ユニオンの中核として活躍する
「時計を分解して遊んでいました」。そう子供時代を語る橋本真純さんは大の機械好き。ケーズデンキ入社時にはパソコンを組み立てられる知識があったという。現在はケーズデンキ川越店のPC売場で接客に励む。「パソコンやカメラに囲まれ楽しく接客をするうちに、お客さまが自然に増えていきました」と話し、月間200名以上のお客さまに応対する。「通信販売が流行しても、店頭で対話しながら商品の使用法や使用感を知りたいお客さまはたくさんいらっしゃいます」と微笑む。
ケーズデンキの創業は1947(昭和22)年。その後、加藤電機商会を設立し「お客さま満足のために、あるべき姿へ向かって正しいことを無理せず確実に実行していく『がんばらない経営』」を貫く。現在は家電量販店を関東圏に151店舗、グループ会社全体で全国に550店舗以上を展開している。
そんなケーズデンキで生きいきと働く橋本さんに2018年、転機が訪れる。ケーズホールディングスユニオンの川越店代議員が退任し、役職を引き継ぐことになったのだ。「『就業規則ってなに?』から始まりました」という組合活動。猛勉強しながら職場環境の改善などに取り組むうちに、背景にある会社制度の課題を感じるようになった。そこで2019年から執行委員に就任。制度改定など組織全体に関わる課題に取り組んだ。
4年経った2023年秋、活動ぶりが認められ、ユニオンから非専従の副委員長にとの打診を受けた。「大勢の前で話すのが苦手な私に務まるのか」。悩む橋本さんは同僚の吉池務さん(現在は上尾店勤務)に相談。「せっかく望まれているなら受けるべき。橋本さんならできる」と背中を押され、覚悟を決めたそうだ。副委員長就任後は一層広い視野でさまざまな課題に臨んでいる。その一つが人間ドック受診の対象拡大。受診対象は正社員のみだったが、全体の4割を超えるパートタイマーへの拡大を目ざして取り組んだ。その結果、パートタイマーの受診が実現した。
橋本さんの行動力は時として周りを驚かせる。昨年の団体交渉で平本忠社長(現会長)に「ぜひ店舗にいらしてください。現場の状況把握やスタッフのモチベーション向上につながります」と思いを伝えた。すると、多忙を極める社長が川越店を訪れた。映像でしか見ることのない社長の突然の訪店に、スタッフ達は驚き、とてもよろこんだという。
地道な活動にも精を出す。休日には担当の北西エリア(群馬、栃木、埼玉の一部)を一店ずつ訪れ、仲間の声に耳を傾ける。専門委員会では職場環境の分野を担当し、メンタルヘルス、ハラスメント、残業、休暇、安全衛生、女性活躍、ダイバーシティと多岐にわたる課題に取り組む。非専従の副委員長4名それぞれが担当するエリアや専門委員会の状況を共有する場を設け、高め合う努力も怠らない。
「組合員の理解と参加が課題です」と語る橋本さんは情報宣伝活動に注力する。ユニオンの会議やイベントの様子を専用アプリでタイムリーに配信。格式ばらず臨場感のある情報が人気で約600名の仲間が視聴するという。香取邦治副委員長(専従)は「組合員目線の橋本さんの発信情報に共感する仲間が多く、ユニオンへの関心につながっています」と感心する。
共に働く仲間達のために ぶれない意思で課題に挑む
敬愛する母親を胸に抱き 仲間のために進み続ける
熱心な活動ぶりは組合の枠を越える。2024年度のUAゼンセン流通部門パートタイム役員リーダー会議のメンバーに選ばれ、年間をつうじてさまざまな労組役員と交流した。昨年7月にはUAゼンセン多様性協働局主催の「パートタイマー100人集会」に事例発表者として登壇。ユニオンの取り組みや今後の課題について説明した。業種の垣根を越えた意見交換にも励んだ。橋本さんは「鈴木店長をはじめ川越店の皆さんが快く送り出してくれるおかげでこうした活動に取り組めています」と職場の理解や協力に感謝する。
「今後はパートタイマーの昇給昇格に尽力したい」と意欲的な橋本さん。多忙ななか、なぜこれほど仲間達のために力を注げるのか。本人に尋ねると、9年ほど前に他界した母親の存在を挙げた。橋本さんが学校でいじめを受けた際、逃げずに立ち向かうよう導き、「なにかあれば私が全責任を取る」と言い切る肝の据わった母。家出した橋本さんの友人を自宅に住まわせるなど、困った人を放っておけない人情家でもあり、多くの人から慕われていたという。「世の中で最も尊敬しているのは母です。心のなかにつねにいる母に人として追いつきたいんです」。
敬愛する母親を胸に抱き、これからも明るい笑顔とぶれない意思で、お客さまのため、働く仲間のために進み続けてくれるだろう。