すかいらーくグループ労連 すかいらーく労働組合 鈴木 淳 さん

「組合に言ったって、なにも変わらないんだよ!」。職場集会で仲間の店長から言われたひと言です。さらにその店長は続けます。「結局は会社の言いなりなんだろ。なにもやってないんだったら、組合費返せよ」。言いたい放題言われ、周りの参加者は目線をそらしうつむくだけ。雰囲気は最悪です。その人は同じエリアの店長なのですが、職場集会のたびに組合批判をしてきます。このことが原因で毎月の職場集会への参加者は、みるみるうちに減っていきました。支部役員を任されていた私は、「会って話せばきっと分かってくれるはず」と考え、その店長の店舗に向かいました。

「お疲れさまです。職場集会のことなんですが…」。 「いま忙しいから、後にしてくれない?」「それに労働組合には用ないよ。きょうだって組合費を使って来てるんだろ?、無駄遣いすんなよ」。その言葉に、苦笑いしかできませんでした。
なんとか組合の名刺だけは、渡すことができましたが、帰り際、「こんな名刺いらねーよ!」と、奥から聞こえるその声に、聞こえないふりをして、逃げるように店舗を後にしました。

その職場訪問以来、すっかり自信をなくしてしまった私は、「もう組合活動なんてどうでもいいや…」と、大好きだった組合活動の予定を見ることすら、嫌になっていました。

そんなとき、見かねた組合役員の先輩が、話しを聞きに来てくれました。寄り添い、大きくうなずきながら、優しく話を聞いてくれるその先輩に、私は悩んでいることのすべてを伝えることができました。
すると先輩は私にこう言いました。「そんなに話したこともない人に、だれだって難しい相談なんかしないよ。鈴木さんだって、私と一対一で話すの何回目?」。「もうあの店長と会いたくない」と思っていた私は、その言葉にハッとさせられました。
そして私は、「少しずつ、あの店長との接点を増やすことから始めてみよう」と、いままで踏み出せなかった一歩を踏み出すことにしました。

「労働組合の鈴木です!」。私はあきらめずに職場訪問を続けます。「またお前かよ、組合役員って暇なの?」。変わらない対応に、前回の記憶がよみがえりそうになります。「結局これか…」と思いながらも、なぜか、前ほどの強い拒否感は感じませんでした。
 その後も3回、4回と同じような対応は続きましたが、忘れもしない5回目の訪問のとき、「また?、鈴木さん暇なの?」。あいさつをし、店内を見ていたとき、ふと名前で呼ばれていたことに気づきました。
 すると、「あのさ、この後時間ある?」。突然のお願いでした。「実は…親の具合が悪くてさ、どうしていいか分からないんだよ」。「最悪、仕事辞めることも考えている」という話しでした。
そして、最後には、少し恥ずかしそうに「だれにも言えなくてさ…」と、一回や二回の訪問ではたどり着けない信頼関係がそこにはありました。
気づけば2時間も、夢中になって会社の制度やUAゼンセン共済のことなどを話していました。
「いや、会社に組合があって良かった」「鈴木さんがいてくれて助かったよ」。そのとき言われたこの言葉は、いまでも私の宝物となって、この胸に焼き付いています。

 「頻度は求心力」。勇気を出して最初の一歩を踏み出し、あきらめずに何度も何度も仲間との接点を増やしていくことで、自分も周りも変わっていく。これが本当の組合活動ではないのかと、実感した出来事でした。
いま、労働組合の組織率は16・3%と低下しています。原因はさまざまあると思いますが、その一つに「労働組合の価値が正しく伝わっていない」というのがあると考えています。「組合があって良かった!」、そう感じてもらえる仲間を、一人でも多く増やす必要があり、その解決策となるのがこの「頻度は求心力」ではないでしょうか。

あのときの店長は、いまでは私の一番の理解者となり、役員仲間として活躍してくれています。そして仲間も少しずつ増え、毎年行っている組合員意識調査では、今期の回収率は95%を超え、過去最高となりました。まさに労働組合の価値が正しく伝わっている成果だと感じています。
 「何度ノックしても、心の扉を開いてもらえない」。これからも、そんな壁にぶつかるときがあると思います。それでも私はこの言葉を胸に、仲間を増やし続けます。
 「頻度は求心力」。

鈴木さんを祝福する東京都支部の仲間達