2023年度地域別最低賃金が全都道府県で決定し、全国加重平均で時間額43円の引き上げとなりました。UAゼンセンでは8~10月を「最低賃金取り組み強化期間」に設定し、企業内最低賃金の点検などに取り組んでいます。今般の最低賃金額が決定した経緯や今後の取り組みなどについて、中央最低賃金審議会目安に関する小委員会の労働者側委員を務める永井幸子副書記長に解説してもらいました。

最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の下限額です。
2023年度の地域別最低賃金が、このたび全都道府県で決定しました。
10月1日より順次、新しい地域別最低賃金の効力が発生(発効)します。

働く者の現状を訴え過去最高額の目安に

地域別最低賃金の審議にあたって引き上げの目安額を示す中央最低賃金審議会は、最低賃金法第9条第2項の3要素(賃金、通常の事業の賃金支払い能力、労働者の生計費)のデータにもとづき審議を重ねました。
私達労働者側は、ことし春の賃金引き上げの成果をセーフティーネットである地域別最低賃金の引き上げに着実につなげることが重要と主張しました。また、物価上昇が働く者の生活に大きな打撃を与えていること、とりわけ最低賃金に近い賃金で働く者の生活を圧迫していることなど、働く者の現状を訴えました。
結果として、2023年度の目安額は、Aランク41円、Bランク40円、Cランク39円、全国加重平均41円となり、昨年を上回る過去最高額の目安となりました。この目安を受け、47都道府県地方最低賃金審議会における審議の結果、全国加重平均で時間額1004円(昨年度の961円から43円引き上げ)と、過去最高となりました。

2023年度 地域別最低賃金金額改正状況
2023年度 地域別最低賃金金額改正状況
2023年度 地域別最低賃金金額改正状況

政府が掲げる「全国加重平均1000円」が実現しましたが、国際的にもいまだ低い水準です。連合が掲げる「だれもが1000円」(すべての都道府県で1000円以上)の早期実現へ向けて、引き続き取り組みを進めていきます。

「だれもが時給1000円」へ前進

強化期間中に点検・協定化を

UAゼンセンでは、地域別最低賃金が決定する8月から発効する10月を中心に「取り組み強化期間」を設定します。取り組みのスタートは「点検」です。地域別最低賃金を下回ることとなる労働者がいないか、現在の企業内最低賃金協定が地域別最低賃金を下回らないか、点検をお願いします。また、本年は企業内最低賃金が2023労働条件闘争方針で決定した最低賃金要求基準(別掲)に達していない場合は、この取り組み強化期間に再度、引き上げに取り組むこととしました。労使での取り組みをお願いします。

「年収の壁」解消し中期ビジョン実現へ

また、本年の中央最低賃金審議会の審議においては、いわゆる「年収の壁」(※)による「就業調整」の影響についても、労使双方が主張しました。
使用者側が主張する、「とくに年末の繁忙期等において人手不足に拍車がかかっている」ことは承知しつつ、労働者側は「労働組合としても税制や社会保険制度の正しい知識の周知などを進めており、最低賃金を上げていっても就業調整が起こらないようにしていくことが重要」と主張しました。
最低賃金の引き上げとともに就業調整の問題がクローズアップされます。UAゼンセンは引き続き、労働条件闘争と政策要請を中心として取り組みを進めていきます。
特定地域内の特定の産業について設定される特定最低賃金の審議も始まっています。最低賃金の果たす役割は大きなものとなっていることをいま一度確認し、“一人ひとりが人間らしく心豊かに生きていく持続可能な社会”を実現していきましょう。

 最低賃金(18歳以上)は、必要生計費、連合リビングウエッジ、法定最低賃金、加盟組合の実態、2023労働条件闘争の要求の考え方をふまえ、月額17万9000 円、時間額 1100円をもとに、消費者物価の地域差を勘案して各都道府県別に算出した金額以上とする。  法定最低賃金×110%に達していない場合は、まずその水準を目ざすものとする。
※「年収の壁」…一定の収入を超えることで、「扶養」から外れ税・社会保険料等の負担が生じるなどの仕組みとして、「103万円」「106(130)万円」「150万円」の3つの壁がある。
いずれも「就業調整」の原因となり、現場の人手不足につながっている。
田村まみ組織内参議院議員の再三の国会質疑、要請もあり、政府は制度の見直しの検討や支援策の導入に取り組んでいる。

【トップ写真】永井副書記長