働く仲間の署名を届け、一日も早い難病指定を訴えた
〝一人ひとりの力を合わせれば国や社会を変えることができる!〟
皆さんは「数は力」や「一人の百歩より、百人の一歩」といった言葉を聞いたことはありますか?。これらの言葉は組合活動や労働運動で大切にされてきた不変の基本原則を示したものです。普段の組合活動のなかでこれらの基本原則を意識することは少ないかもしれません。それでも、一人ひとりの力を合わせ、大きな課題の解決に取り組むことは労働組合の「原点」と言えます。今号では、この原則を体現し、「遠位型ミオパチー」を抱えた組合員の希望となるよう、署名活動・要請活動を展開した大阪ガス労働組合の取り組みを紹介します。
【トップ写真】「難病を抱えた仲間を救いたい」という思いに共感した全国の働く仲間達から、23万9761筆の署名が集まった。2014年3月、UAゼンセン本部役員、川合孝典組織内参議院議員と共に厚生労働省に署名簿を提出。一日も早い難病指定を訴えた。右端は署名を手交する大阪ガス労働組合の蔵元浩昭委員長(当時)

2009年、私達、大阪ガス労働組合の組合員がこの難病を発症して以来、UAゼンセンの皆さんには、難病指定を求める署名活動にご協力をいただきました。ありがとうございました。23万筆超の署名が後押しとなり、2015年には無事に難病指定が行われました。そして、2024年3月、世界に先駆けて指定難病である「遠位型ミオパチー」の治療薬の製造・販売が承認されました。
UAゼンセン総合サービス部門 第13回定期中央委員会での発言より
一人ひとりが力を合わせることで、国や社会を変えることができるという組合活動の本質をあらためて実感しました。
極端に患者数の少ない疾患を発症 仲間の声が届き「難病指定」へ
「遠位型ミオパチー」は、手足など体の末端から筋力が低下する進行性の筋疾患(別項参照)。これまで根本的な治療が困難とされ、手探りの状態が続いていた。また、国内の推定患者数が300〜400名程度と極めて少ないため、治療薬の研究・開発の遅れに課題があった。2015(平成27)年に厚生労働省は「遠位型ミオパチー」を難病に指定することを決定。これにより、患者に対する医療費助成が実現し、治療薬などの研究促進が期待された。


そして、この難病指定の実現の背景には、この疾病を抱えた仲間を助けるため、懸命に署名活動・要請活動を展開した大阪ガス労働組合の仲間達の姿があった。
「もともと、大阪ガス労働組合には、『一人で解決できない課題を乗り越えるため、一人ひとりが力を合わせる』という風土がありました」。大阪ガス労働組合の岩木年広委員長はそう語った。2009年、組合員の男性が遠位型ミオパチーと診断されると、地方出身の従業員が暮らす社員寮を中心に、同期入社の仲間達が自然と署名の呼びかけを始めたという。当時、支部役員を務めていた田原巧士さんは、署名活動の中心的な役割を担った。
「彼は職場の同僚でもあり、社員寮で同じ屋根の下で生活を共にした仲間でした」。公私にわたり苦楽を共にした仲間を助けたいという田原さんの呼びかけにより、同期入社組を中心に2000筆の署名が集まったが「まだ足りない」と感じた田原さん達は、JR高槻駅(大阪府高槻市)での街頭署名など、活動を活発にしていった。
働く仲間が団結することが組合活動の原点

UAゼンセンの仲間の協力により 新たな治療の道が開かれることに
「署名活動を始めた当初から、『UAゼンセンの仲間にも協力してもらおう』という声はありました。しかし、『まずは、身近な仲間達で活動を盛り上げ、職場のなかで理解を広げていくことが大事』と判断しました」と、田原さんは振り返る。自身も、出向していた別会社でも声かけを行うなど、懸命に署名を集め続けた。こうして、大阪ガス労働組合全体で、1万4700筆の署名を集約。これをもってUAゼンセンに署名活動への協力を要請することを決めた。

大阪ガス労働組合による協力要請を受け、UAゼンセン全体での署名活動が始まると、「難病を抱えた仲間を助けたい」と共感の輪が全国に広がった。そして、仲間達の思いは、23万9761筆の署名につながった。また、署名活動の展開と合わせ、友好議員による国会質問などを重ねたことが実り、2015年に難病指定が実現した。田原さんは「ここまで仲間のために力を尽くしたのは初めての経験。仕事やスポーツで感じるのとは全く違う達成感とよろこびがありました」と当時の思いを語る。
そして、2024年3月、遠位型ミオパチーの治療薬「アセノベル(アセノイラミン酸)」の製造・販売が世界に先駆けて承認された。治療薬には、症状の改善が期待されている。難病指定から10年の時が流れ、いよいよ遠位型ミオパチーの治療へ向けた新たなステージが始まった。このうれしいニュースを前に、岩木委員長、佐合書記長は「一人ひとりの力を合わせることは、組合活動の原点。個人には変える力がなくても、皆で協力すれば、国や社会を変えられる。まさに“数は力”を実感する活動となった。ご協力いただいた皆さんに、あらためて心から感謝したい」と力を込める。

最後に、署名活動をけん引した田原さんは、新しい目標を教えてくれた。「彼が元気だったころ、よく一緒に沖縄へ旅行していました。また一緒に行きたい」と微笑む。この願いが叶うことを心から祈念している。



医薬品・医療機器の安定供給の実現を求める田村議員
病気を治療することは医療の務めですが、治療に必要な医薬品や医療機器を安定的に供給することは政治の役割です。かつて、柳澤みつよし組織内参議院議員は、「難病を抱えた仲間を助けるのは政治の使命」と言い切っています。
この考えは今日も受け継がれ、現在、田村まみ組織内参議院議員は、医薬品・医療機器の安定供給の実現に全力で取り組んでいます。国内の創薬基盤を損なうことのないように、引き下げありきの薬価改定に反対し、診療報酬改定のない年に行われる「中間年改定」の廃止を訴えています。