UAゼンセンは、多様な加盟組合が結集する日本最大の産業別労働組合として、さまざまな業種で働く仲間の課題解決に取り組んでいます。スーパーマーケットや百貨店、ドラッグストア、家電量販店など流通・小売業で働く仲間が集まる流通部門では、これまでカスタマーハラスメント対策に力を注ぎ、その結果、昨年6月には「カスタマーハラスメント対策法」が成立するなど、大きな成果を上げてきました。
一方で、流通現場における根深い課題の一つに、「万引き犯罪」があります。今号では、万引き犯罪防止へ向けた流通部門の“最前線”の取り組みを紹介します。

「万引き」とは?

営業時間中の商店・小売店から代金を支払わずに商品を店外に持ち出す(盗む)こと。刑法が規定する「窃盗罪」に該当する犯罪行為であり、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される。

Ⅰ. たかが「万引き」?

いいえ、流通現場の深刻な課題です

警察庁の発表によると、2025年の万引き犯罪の認知件数は10万5135件となっています。これは、前年との比較で6843件の増加であり、空き巣などを除いたいわゆる「非侵入窃盗」のなかでは最大の割合となる38.5%を占めています。

万引き犯罪の防止を目ざし、調査・研究や啓発活動に取り組む「全国万引犯罪防止機構」は、万引き犯罪による2023年度の被害額を年間で約3460億円にのぼると推計しています。毎年、万引き犯罪によって、働く仲間達の奮闘で得られた利益が不当に奪われ、賃上げや労働条件改善に使われる原資の圧迫にもつながっていることは、流通現場における深刻な課題となっています。

認知件数は「氷山の一角」?

「認知件数」とは、警察などの捜査機関が被害届や告訴をつうじて、犯罪行為の発生を認知(把握)した件数を意味しています。これは、実際に発生した犯罪行為の件数とは異なり、捜査機関が把握していない事案を含めると、万引き犯罪によって、さらに大きな被害が生じている可能性があります。店舗業務に追われ、「万引き」に気づくことができないケースや、被害に遭っても警察への通報をためらう実態があります。

このことから、万引き犯罪に関しては、公式な統計結果に表れない「暗数」が非常に大きいと予想されています。例えば、「全国万引犯罪防止機構」では、年間被害総額の推計をもとに、「万引きの認知率は0.3%程度」、つまり99.7%の万引き犯罪は認知されていないという推察を発表しています。

実態の把握は「万引き対策」の第一歩

「万引き」の手口(一例)

商品をカバンやポケットに入れ、そのまま持ち出す手口。最も典型的で件数が多い。従業員は購入した商品か否かの判断に注意を払う必要があるが、エコバッグの普及に伴い、判断はより一層困難になっている。

知っていますか?エコバッグのマナー
◇店内では備え付けの買い物カゴを使う
◇エコバッグは精算が済んでから使用する
◇エコバッグを店内に持ち込む際には、折りたたんでおく
◇他店で買い物した商品が入ったエコバッグは、口を締めて入店する

箱から商品だけを抜き取って盗む手口。

トイレや試着室などに商品を持ち込み、そのままカバンに入れたり、着用したりして商品を盗み出す手口。

取り付けられている商品管理タグを切り取って盗む手口。

「万引き犯」の人物像は?

手口が多岐にわたるのと同じように、「万引き」の行為者、いわゆる「万引き犯」の属性もさまざまです。年間をつうじて、特定の年齢や性別に限らず、老若男女が万引き犯罪で検挙されている実態があります。

「万引き」という行為自体は許されない犯罪行為ですが、その原因は「生活費を遊興費に費やし、お金に困っていた」といった単純な理由だけでなく、「本人だけの問題」と断定することが難しいケースも指摘されています。例えば、ひとり親家庭の困窮状況や「物を盗みたい」という衝動に抗えずに窃盗を繰り返すクレプトマニア(窃盗症)の問題など、万引き犯罪の背景には、社会全体で解決すべき課題が潜んでいます。

「お金に困って」だけじゃない 万引き犯罪の背景はさまざま

新しい「万引き犯」の姿「爆盗」(大量窃盗)とは?

昨今、これまでの手口とは一線を画す「万引き」(窃盗)の事案が発生し、流通現場に不安が広がっています。これらの事案は、特定の商品を大量に窃盗することから、「爆盗」(大量窃盗)と呼称されています。

「爆盗」においては、化粧品や小型電化製品など、軽量でインターネットなどをつうじて転売しやすい商品が狙われやすい傾向があります。また、外国籍の犯罪グループによる事案では、見張り役や実行役など複数人で役割分担をしたうえで、大量の商品を一気に盗み出すなどの特徴が挙げられています。