UAゼンセンは、好事例を共有し労働時間の短縮・改善の取り組みを活性化させるため「労働時間改善運動活性化セミナー」を開催しています。11月29日にWebで開催した今回のセミナーでは、全国の仲間達が休日・休暇に関して学びました。今回の取り組み趣旨や当日の模様を、セミナーを主催した労働条件局から報告します。

2024労働条件闘争では、労働時間短縮・改善の取り組みとして休日の増加を勝ち取ったという解決報告が90組合超となるなど、大きな成果が生まれています。この背景には、人材不足の続く現在、リモートワークの進展や若い人材の意識の変化等々が挙げられます。世界的にも、週休3日制やつながらない権利など、労働時間や働き方の改革・改善が進むなか、日本でも労働時間にかかわる制度のあり方に変化が生まれています。そこで今回は「休日・休暇の充実」をテーマに、専門家の講演と組合の取り組み事例報告を実施し理解を深めました。講演の要旨をご紹介します。

講演「休日・休暇の現状と対策」

早稲田大学 商学学術院 小倉一哉教授

年休取得促進へ向け 本気の取り組みを

日本における年次有給休暇制度は、6カ月以上継続勤務した人に対して10日付与され、勤続に応じて最高で年20日が付与される法定休暇です。年次有給休暇(以下、年休)は休日とは異なり、本来長期で取得するためにあり、ヨーロッパでは家族でバカンスに出かけることが一般的です。しかし、日本では使い勝手を良くするために2008年に時間単位取得が可能となり、ちょっとした用事や通院などで年休を取得できるようになっています。こういうときには私に言わせると、年休を使うのではなく病気休暇など別の制度があるべきですが、この時間単位年休は政策でさらに促進されようとしています。本来の長期休暇ではなく、休日や欠勤の代わりに有給休暇が使われていることは日本の課題であると私は考えています。

以前、私は日本の労働者が年休を取り残す要因について研究しました。その結果、第1に業務量が多いなど多忙であること、第2に人事評価への影響を恐れたり周囲が取得していないなどの職場環境が要因となっている、との結論に至りました。そのほか、病気や急な用事のためにとっておくという理由もあります。当たり前に思えますが、これらの要因への対策が必要です。

講演する小倉一哉教授。41名がWebで聴講した

年休の取得促進に関する事例としては、年休取得率が300位以下から3位(民間調査)にまで向上した(株)クボタが挙げられます。労使一体となって、トップメッセージの発信、部門別取得率の可視化、勤怠システムの整備、風通しの良い職場環境づくり、アラートの発信など、地道に取り組んだ結果といえます。

私が考える年休取得促進の取り組みとしては、まず個人別の年休取得計画をつくり見える化すると同時に、要員計画を行うことです。また、営業日や営業時間を変えること。私傷病休暇や失効年休積立制度を設定し、申請書類をできるだけ不要にして利用しやすくすることなどが有効と考えます。そして最も重要なのは全社的に本気で取り組むことです。

週休3日制の広がり 制度は4タイプ

次に、選択的週休3日制について考えてみたいと思います。イギリスでも、ことし10月に選択的週休3日制の法案が提出されましたが、日本では国家公務員に対して2025年4月から導入されます。制度のつくり方としては、①週所定労働時間も賃金も維持するタイプ②週所定労働時間を減らすのに応じて賃金が減額されるタイプなど4タイプに分類することができます(別掲)。実例としては、通常の働き方に加え①また②のタイプから労働者自身で選択することができ、人事評価は時間当たり生産性を用いるなどの方法が主流になりつつあります(事例の詳細は動画を参照)。