デニムを愛し、製品に誇りを持つ仲間達

私達にとって身近なデニム。広島県に日本で唯一、原綿(コットン)から生地まで一貫生産しているUAゼンセンの仲間がいます。創業130年を誇るカイハラの仲間達です。国内シェアは約50%。皆さんがいま履いているジーンズにもカイハラデニムが使われているかもしれません。高品質でサスティナブル(持続可能)なモノづくりの職場を紹介します。

世界が注目するカイハラデニムの製造現場を訪ねるため広島県福山市へ向かった。山陽新幹線の福山駅でUAゼンセン広島県支部の満田亜由実常任と待ち合わせ、県支部の車で三和(さんわ)工場へ。市内を抜け山道を走ること約1時間、神石(じんせき)高原町にある工場に到着した。名前のとおり高地にあり、冬はかなり冷え込むそうだ。
ちょうどお昼休みで、岩田憲幸組合長はじめ、カイハラ労働組合の執行部メンバーが笑顔で出迎えてくれた。着用しているユニフォームはもちろんカイハラ製デニム。おしゃれなデザインと色合いがさすが。皆さん、気に入っているそうだ。

広島県内に4つの生産拠点を展開。その一つ三和工場は、神石(じんせき)高原町内にあり、紡績と織布の工程を担っている

カイハラは日本で唯一、紡績から染色、織布、整理加工(仕上げ)まで、デニム生地の一貫生産を行っていることで知られている。広島県内に4工場を構え、ここ三和工場は紡績と織布、本社工場が染色、上下(じょうげ)工場は旧式織機によるビンテージデニムの生産、そして吉舎(きさ)工場では紡績から整理加工までの全工程を行っている。各工場は車で1時間以内の距離にあり、工程間の連携もスムーズ。「製造過程で万一問題を発見すれば、速やかに前工程にフィードバックし、対応することができます」と、岩田組合長は話す。自社での一貫生産体制が高品質と安定供給を実現し、国内外のアパレルメーカーからの圧倒的な支持につながっている。
藤原裕幸副組合長に工場内を案内していただいた。「厳選した原綿を多くの工程を経て、糸にしています」。1台で同時に1000本もの糸を紡ぐことができるという巨大な精紡機16台が並ぶ姿は圧巻。熟練した仲間が昼夜、稼働を支えている。

広島の山奥に
こんなにスゴイ
デニムメーカーが
あった!

昨年、カイハラは創業130年を迎えた。この間、いく度かの危機に直面したが、革新的な発想と技術力で乗り越えてきた。終戦後、絣の需要が落ち込むと、洋服用の広幅絣を開発。イスラム教徒が腰に巻くサロンとして中近東への輸出を拡大していった。その後、中近東の政情不安と決済通貨であるポンドの切り下げによりふたたび窮地に陥ると、若者の間で流行し始めていたデニムに着目した。
営業部の信岡健さんは、絣の製造で培った染色技術を応用してジーンズ用の糸を染める「ロープ染色機」を一から作り上げた先人に敬意を込める。1970(昭和45)年、糸の芯が染まらず、履き込むほどに色落ちして風合いが出る「芯白(しんじろ)」の糸が完成し、デニム生地メーカーの道が開かれた。以来半世紀、デニムの可能性に挑戦し続けている。

国内外から、さまざまなデニムのオーダーを受けるカイハラ。その窓口となっているのが、信岡さんが所属する営業部だ。糸の組み合わせや染め方の工夫によって、さまざまな色合いや肌触りのデニム生地を生み出すことができる。さらに吸放湿性や発熱、速乾、ストレッチなどの機能を備えたものや、天然の原料を使い、最終的に自然に還すことが可能な、環境に優しいサスティナブルな繊維を使ったものなど、デニムは日々進化している。

福山市の本社で、カイハラのデニムづくりについて教えてくれた営業部の信岡健さん。さまざまなニーズに応えるため、つねに開発課や製造現場と協働している


あらゆるニーズに応えるため、年間800点以上のサンプルを作製すると語る信岡さん。開発課と共に製品化した、中学校の制服に採用されたデニムを見せてくれた。「経年変化しないデニムをつくることも可能です」。
最後に2024年のデニムのトレンドを伺うと、「きれいな色合いでシンプルなもの」とのこと。ぜひ一着欲しくなった。

カイハラ労組には毎月恒例の活動がある。月初めの朝、執行部のメンバーが工場の玄関前に立ち、出勤して来た仲間達にあいさつとともに交通安全を呼びかけている。「マイカー通勤が多いため、無事故を願って続けています」と、岩田組合長は語る。

カイハラ労働組合第58回定期大会

組合員数は540名。地元・広島の出身者が多く、カイハラデニムに憧れて入社する仲間も多いそうだ。組合では、各工場に支部を設け(本社支部、吉舎支部、上下・三和支部)、賃上げと夏・冬の一時金交渉以外は支部ごとに労使協議会を開き、職場環境の改善に努めている。会社への要求は、事前にアンケートを取り、どれくらいの仲間が要望しているか具体的に示すそうだ。
岩田組合長はUAゼンセン広島県支部の運営評議員を務め、県支部行事にも積極的に参加する。「組合活動はしんどいだけじゃない。モノづくりの精神とともに組合活動の伝統も若いメンバーに継承していきたい」と語った。

組合執行部による「あいさつ運動」