新年号の巻頭を飾るのは、恒例の「リーダーの100冊」です。UAゼンセンの向こう2年間(2023−2024年度)の運動をリードする125名のリーダーが、おすすめの一冊を紹介します。最初に、分断が進む世界情勢を受けてトップリーダーから提示された「民主主義」について改めて考える書籍3冊を取り上げます。続いて、重複しておすすめされている6冊の本をはじめ幅広いジャンルの本がラインナップ。読者の皆さんにとって、より良い社会や職場、心豊かな人生を実現するためのヒントが見つかりますように。 

※常執は常任中央執行委員、中執は中央執行委員の略

民主主義国家VS権威主義国家という世界の分断
議会制民主主義はトランプ大統領を生み、
ロシアのような一党超優位を招く側面を持つ
そもそも日本の現政権に民意は反映されているかー
いまこそ民主主義について考えよう

『そもそも民主主義ってなんですか?』 宇野 重規 著

「民主主義」とは一体なんなのか。民主主義の歴史や今日までの変遷、新たな民主主義を考えるヒントなどについて、政治学者である筆者が分かりやすく解説する。  

松浦 昭彦 会長

<ひと言>私達は当然のように民主主義国家に生まれ育ってきたが、現在、世界では民主主義が脅かされたり、ポピュリズム(大衆迎合)など民主主義の弊害が見られたりしている。日本でも各種選挙で若者の低投票率が続き、「投票してもなにも変わらない」という空気が漂っている。
古代ギリシャで生まれた民主主義の今日までの変遷、民主主義を守り育てるうえで大切にすべきこと、そして民主主義に完成形はなく現代的なバージョンアップが必要なことなどが、読みやすい文体で書かれている。とくに若い仲間におすすめしたい。

『22世紀の民主主義』  成田 悠輔 著

劣化した民主主義に対して、「民主主義との闘争」「民主主義からの逃走」「まだ見ぬ民主主義の構想」の3点から民主主義の再生を検討し、「無意識データ民主主義」を構想した一冊。

古川 大 書記長

<ひと言>私達は当たり前のように民主主義を大切にし、政治の分野においてそれを実現する手段が「選挙」だと考えている。しかしながらこの間、労働組合の立場から関わってきて、選挙や政治、民主主義の現状を見たときに、なにか違っているのではないか、なにかおかしいのではないかと感じることがある。本書は、突拍子もないような構想だが、なにかしら私達が考えるヒントを与えてくれていると思う。

『民主主義とは何か』 宇野 重規 著

民主主義はもう時代遅れなのか?。それとも、まだ活路はあるのか?。それを考えるためには民主主義とはどのような制度なのか「正しく」知らなければならない。本書は、ギリシャ・アテナイにおける民主主義思想の「誕生」以来、現代までに起こったさまざまな矛盾と、それを巡って交わされた思想家達の議論の跡をたどることで、民主主義の「本質」とはなんなのか、そして未来への可能性について考える。

大濵 直之 副書記長・財政局長兼務

<ひと言>民主主義という「制度」の利点と弱点が人々にどのように認識され、どのようにその問題点を「改良」しようとしたのか、あるいはその「改革」はなぜ失敗してしまったのかをたどるとともに、日本の民主主義の特質とその問題点についても分析する。平易な政治思想史の教科書としても最適。労働組合の民主主義を考えるとき、課題や問題解決に「参加すること」、それをとおして「責任」を問い直すことが重要であると認識させてくれる。

『海軍式 戦う司令部の作り方』 堂下 哲郎 著

日本海軍は最優秀の人材を集め進歩的な組織運営を行ったが、太平洋戦争で米海軍に敗れた。敗因は成功体験の絶対視、行き過ぎた精神主義、情報の軽視、組織の硬直だった。

木暮 弘 副会長

<ひと言>21世紀も4半世紀が過ぎ、デジタル革命と言われるほどAIやITが進歩しているが、日本はなにか閉塞感に苛まれている。成功体験から抜け出し、新たな時代へ突破しようとするときの「リーダーのあり方」に気づかされる痛快な一冊。

吉山 秀樹 常執 製造産業部門事務局長

<ひと言>世界屈指と言われた日本海軍の失敗事例をもとに、組織を構成するのが「人」である限り重要となる「リーダー」「チーム」「意思決定のあり方」について書かれている。環境変化が多様化するなか、組織をつくり動かしていくヒントとなる。

『オルグ!オルグ!オルグ!』 本田 一成 著

オルグとは、労働組合をつくり組織拡大に取り組むオルガナイザーのこと。チェーンストアを中心とした労働組合の生成・発展について、歴史的な経緯とその果たした役割を解説。

波岸 孝典 常執 流通部門事務局長

<ひと言>流通労働運動の萌芽から発展期まで、産業別労働組合を舞台にオルグマン達の想いにふれ胸が熱くなる。先輩達の悲願であった産別統合を経て、日本最大の産別で労働運動を実践している自分自身をつねに棚卸しする重要性に気づかされる。

西川 由起 中執 まいばすけっと労組

 <ひと言>組合役員になって間もないころに手に取り、活動の意義について深く考えさせられた一冊。働く仲間とその家族の幸せ実現に思いを馳せ、組織化にまい進したオルガナイザー達の信念と行動力に心が奮い立つ。

※西川中執は組合事情により12月12日の第3回中央執行委員会で退任されました。

『トヨタの会議は30分』 山本 大平 著

素早い意思決定やムダのないコミュニケーションを実践するトヨタ自動車のノウハウが詰まった一冊。「ギガ速なコミュニケーション能力」が実践できない会社は淘汰される。

井上 克彦 常執 イオンクレジットサービスユニオン

<ひと言>今後はAIにはできない「人対人」の深いコミュニケーションだけが残る。感謝の気持ちで相手に接することこそ、あらゆるコミュニケーション問題の特効薬。生産性向上をはかりつつ、人にしかできないコミュニケーションを実践したい。

中村 大樹  中執 ウエルシアユニオン

<ひと言>昨年の誕生日に次女からプレゼントされた一冊。無茶苦茶勉強になり、当たり前のことが当たり前にできていないことを痛感した。仕事だけでなく組合活動にも当てはまる部分が多い。本気で生産性を上げることを考えなければならない。

『2030年すべてが「加速」する世界に備えよ』
ピーター・ディアマンディス、スティーブン・コトラー 著 土方 奈美(訳)

テクノロジー同士が合わさることですさまじい「加速」が進み、破壊的な変化をもたらす。しかし、多くの課題を解決するのもまたテクノロジー。近未来の姿を予測する。

北山 淳 常執 セブン&アイ・フードシステムズ労組

<ひと言>人類10万年の歴史のなかで、ここ10年、30年のテクノロジーの進化はすさまじい。その理由は、テクノロジーが組み合わさり「コンバージェンス(収れん)」するため。子供のころに読んだSFの世界、もしくはそれ以上の未来がそこまで来ている。

松倉 玲 中執 全髙島屋労連

<ひと言>「空飛ぶ車」や「老化の克服」など、あと10年でこんなSFのような世界が来るのかと、のめり込むように読んだ。夢物語ではなく、ロジックがしっかりと描かれているため納得性がある。変化の時代に備える情報・知識が欲しい方におすすめ。 

『キングダム』 原 泰久 作

古代中国・春秋戦国時代末期における、戦国七雄の戦いを背景とした漫画作品。中国史上初めて天下統一を果たした始皇帝と、それを支えた武将李信が主人公の物語。

鳥居 旭 中執 象印マホービン労組

<ひと言>漫画と軽んじることなかれ。組織論の美学が注ぎ込まれた素晴らしい作品。〝武将=リーダー”と置き換えて読んでほしい。武将一人だけ強力でも戦に勝つことはできない。リーダーとはどうあるべきか考えさせられる。ぜひご一読を!。

林 万喜 中執 マルハンユニオン

<ひと言>登場人物の生き方や考え方が深く描かれていて、リーダーシップやマネジメントなど気づかされることが多い。主人公のブレない信念と、その思いに共感する仲間との絆は感動的。とくに44巻は、何度見ても涙してしまう(現在全66巻)。

『夢をかなえるゾウ』 水野 敬也 著

主人公は華やかなパーティーに参加し、みじめな思いをした平凡な会社員。自信を失う彼のもとに象の姿をしたインドの神様・ガネーシャが現れ、さまざまな課題をつうじて成功へと導く物語。

伊津田 秀美 中執 オールサンデーユニオン

<ひと言>ガネーシャの教えは、当たり前なことやシンプルなことばかりだが、改めてなるほどと気づかされる。私が一番心に残ったのは、「本気で変わろ思たら、意識やのうて、『具体的ななにか』を変えなあかん」。読書が苦手な方にもおすすめ。

𠮷井 美雪 中執 イオンリテールワーカーズユニオン

<ひと言>就職活動中、自分だけうまくいかず悩んでいるときに初めて読んだ。ガネーシャが出した課題に、「その日頑張れた自分をホメる」というものがあり、私もそれを実践し日記を書くようになった。いまでも時々読み返し、新たな発見がある。


『いま、なぜ武士道なのか』 青木 照夫 著

畑 慎一 副会長

江戸時代中期に佐賀鍋島藩士・山本常朝が「武士の心得」について述べた『葉隠』(はがくれ)から、人の上に立つ者が教訓とすべき考え方や行動を示す。
<ひと言>10年ほど前からつねに持ち歩き、自身の考え方や行動の参考にするだけでなく、さまざまな報道について考察するときの参考にしている。「断固として行う」という項があり、悩んだときに肚を決めさせてくれた。 

『この命、義に捧ぐ 台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』 門田 隆将 著

永島 智子 副会長 イオングループ労連

「国共内戦」において、敗走を重ねた蒋介石率いる国民党軍が台湾の金門島での戦いにだけ大勝利した。その作戦に関わった根本陸軍中将について描くノンフィクション。
<ひと言>在留邦人4万と35万の北支那方面軍の部下を日本に送還することができた蒋介石への恩を返すため、命懸けで台湾に渡った根本中将の生きざまに心が震えた。米中対立やウクライナ侵攻が起きているいま必読の書。

『60歳からはやりたい放題』 和田 秀樹 著

森田 幸宏 副会長 日清紡労組

年齢を重ねると将来に対する不安から蓄えや健康を気にする人が多いが、60歳からは「やりたい放題」に生きることこそ、若々しさを保ち、頭の回転を鈍らせない秘訣と説く。
<ひと言>コロナ感染を含め、ストレスや災害の多い世の中になり、不安を感じる人は多い。本書は考え方や生き方を少し変えてみるきっかけになるのではないか。ただし、「やりたい放題」の文言を誤解しないように。

『健康さんぽ 東京』 朝日新聞出版 編

坂田 浩太 副会長 すかいらーくグループ労連

都内のユニークな「さんぽコース」を33コース紹介。4千歩(さくっと)、6千歩(ほどよく)、8千歩(しっかり)、1万歩(がんばる)に分かれていて、チャレンジしやすい。
<ひと言>移動が制限されたこの2年半、新たに見つけた趣味が家族との散歩。知っている土地もゆっくり歩くといろいろな発見があって楽しいし、家族との時間も充実したものになる。 

『砦に拠る』 松下 竜一 著

町田 𠮷宏 副書記長・組織局長兼務

大分・熊本の県境に建設された下筌(しもうけ)ダムにおける室原知幸さんの10年に及ぶダム建設反対闘争を描く。 
<ひと言>私達がよく聞く言葉に、「法に叶い、理に叶い、情に叶う」という一説がある。これは、室原さんがダム建設反対集会で、「私の民主主義という解釈は―」の後に続けて述べたもの。3年前に仲間とダムを訪れ、言葉の原点(現場)を知る機会を得た。近くには資料館や石碑も建つ。

『格差の起源』 オデッド・ガロ― 著 柴田 裕之、森内 薫(訳)

西尾 多聞 副書記長

副題は「なぜ人類は繁栄し、不平等が生まれたのか」。人類の歴史を俯瞰し、成長とその際に発生した格差の原因の謎を考察する。大きな流れのなかで現在を見つめることができて新鮮。
<ひと言>「格差」の文字が目に留まり購入。児童労働や教育、男女間格差など、現在の労働問題についても人類史的な視点で語られていて新鮮に感じた。さまざまな課題の未来について、ポジティブな論調で書かれている点が良かった。

『ルポ コロナ禍で追いつめられる女性たち 深まる孤立と貧困』 飯島 裕子 著

永井 幸子 副書記長 

シングルマザー、DVでステイホームできない女性、テレワークができない非正規雇用、高齢おひとりさま、氷河期世代など、深刻な状況に置かれた女性の視点からコロナ禍を振り返る。
<ひと言>コロナ禍は女性の就労・生活に大きな影響を与えたといわれる。その状況を知りたくて手にした一冊。女性達の生の声が詰まっている。彼女達に労働組合との関わりがあったならと思う。