UAゼンセンには、年齢、性別、国籍、働き方など多様な属性を持った組合員が集っています。6月15日、多様性協働局は、近年話題に上ることが多い「発達障害」について理解を深めるため、NPO法人DDAC「発達障害をもつ大人の会」から広野ゆい代表を講師に招き、「『大人の発達障害』理解促進セミナー」を開催しました。


発達障害への正しい理解で一人ひとりの強みを生かす環境をつくる


DDAC「発達障害をもつ大人の会」
広野 ゆい 代表

私達、DDAC「発達障害をもつ大人の会」は、発達障害を持つ大人の当事者が主体的に活動をしています。私達の目的は、一人ひとりが違いを乗り越え、お互いを認め合える社会を構築することです。

そのために、私達は、発達障害の当事者の能力発揮につなげるために、実態把握や医療・支援体制の改善、社会的認知を広げる活動、就労や生活全般にわたる支援活動などを展開しています。

現在、「『大人の発達障害』が増えている」と言われています。しかし、実は、かつては「大人の発達障害」という疾患は存在しませんでした。

2002年に私達が活動を始めた当初は、「発達障害とは子供の疾患である」という考えが主流でした。しかし、2005年に「発達障害者支援法」が施行されると、想定されていなかった大人の当事者からの相談が急増しました。この過程で、次第に「大人の発達障害」の実態が明らかになっていったのです。

一般に、発達障害と言うと、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)、LD(限局性学習症)などが挙げられます(下項参照)。しかし、これらの症状を抱えるすべての人が「発達障害」になるのではありません。

これらの症状は、認知(知覚・理解・記憶・推論・問題解決)の発達における高い部分と低い部分の差と捉えることができます。そのため、これは言わば、「発達の凸凹(でこぼこ)」と呼ぶべきものと考えています。そして、一人ひとりの持つこれらの「凸凹」に、適応障害(特定のストレス要因にうまく適応できず、心身のバランスが崩れて日常生活や仕事に支障をきたす状態)が加わることで、「発達障害」と診断されます。つまり、「発達の凸凹」だけでは「発達障害」には該当しません。

そして、「大人の発達障害」の実態とは、①子供のころに「発達の凸凹」を見過ごされて大人になる②社会人になって、周囲の理解が得られず否定や失敗の経験を重ねる③その結果、適応障害が発生し、仕事や生活に支障を来たし、「発達障害」と診断されるというものです。

なお、現在は「神経発達症」という診断名が使われることもあります。診断名や診断基準が変わったとしても、大切なことは不変で、一人ひとりの脳の特性が異なることを理解することです。

発達の「凸凹(でこぼこ)」と考える

発達障害の当事者は、共通して「生きづらさ」を抱えています。

例えば、「感覚と認知の違い」というものがあります。「見え方・聞こえ方の違い」と考えると分かりやすいかもしれません。つまり、「一緒に同じことをしていても、見えているもの・聞こえているものが全く異なる」という状況です(下項参照)。

また、発達障害で多く語られることの一つに、「疲れやすさの問題」があります。これは、発達障害の当事者が「ストレスに弱く、我慢ができない」ということではありません。「疲れやすさ」は、「もともとストレスがかかっている状態である」ことに起因するものです。

これらの症状は、職場で「やる気がない」「いい加減だ」「無視している」と捉えられることが多々あります。しかし、決してそのようなことはなく、脳の特性に起因する結果です。当然ながら、「気持ち」や「意識」「やる気」の問題でもありません。

大人の発達障害に関する実態調査では、「発達障害という診断を得られたときの気持ち」について、「ほっとした」「納得した」という回答が多いです。周囲にできることとしては、「先入観なく、そのままを受け入れる」ことが第一歩。続いて、「見え方、聞こえ方、感じ方」や「うまく伝えることが難しいこと」などを理解していくことが重要です。

多様性を受け入れる視点を持つ

最後に、実際の職場における「合理的配慮」について考えたいと思います。

2024年4月以降、「障害者差別解消法」にもとづき、事業者に対して、発達障害を含む障害者に対する「合理的配慮の提供」が義務化されています。

診断の有無に関わらず、職場では発達障害の当事者について、「時間に遅れる」「整理ができない」「同じミスを繰り返す」といった事態が発生することが多いです。

例えば、「仕事の指示が通りにくい」という事例を考えてみます。具体的には、「当事者に対する仕事の指示について、返事は良いが、話を聞いておらず、仕事もやっていない」という場合です。

この場合、原因となる脳の特性としては、「聴覚過敏があり、ちゃんと指示が聞き取れない」「集中力の持続が難しく、口頭での指示・説明が途中で理解不能になる」「短期記憶が弱く、聞いたことを忘れてしまう」などが想定されます。

これらをふまえ、職場でできる工夫としては、「指示を口頭だけではなく、メモやメールで伝える」「指示をする際に、その場でメモを取ってもらい、内容を確認する」といったことが考えられます。

「合理的配慮」とは、当事者を特別扱いすることではありません。「配慮」という言葉を「調整」に置き換えて考えると分かりやすいですが、「多様性を受け入れる」視点を基本に、当事者を含め、だれもが十分に能力を発揮できる環境をつくることです。