アークミールユニオン
今号は後編として、UAゼンセンの仲間の60%を占める「短時間組合員の組合活動への参画」について先進事例を紹介します。
アークミールユニオンでは、職場で大きな力となっている短時間組合員の組合活動への参画は欠かせないと、短時間で働くPA(パートタイマー・アルバイト)の仲間の声を反映できる組織体制とリーダーづくりに力を入れてきました。昨年の大会で、パートタイム組合員で構成する「PA執行委員会」を発足し、メンバーが活発に活動しています。これまでの経緯を西村徹委員長にうかがいました。
現場をよく知るパートの仲間が参画する組織をつくりたかった
パート・アルバイトが納得できる加入活動で組合への信頼を得る
アークミールは、手ごろな価格でステーキが楽しめる『ステーキのどん』や『フォルクス』、しゃぶしゃぶとすき焼きの専門店『どん亭』を関東、関西、九州に130店舗展開している。
組合は1992年にフォルクスユニオンとして結成し、2015年に現アークミールユニオンとなった。「私達の職場では、約2000名の働く仲間のうち9割以上が短時間で働くパートタイマー・アルバイトの仲間達で、組合への加入(組合員化)が課題でした」と西村徹委員長は話す。
2014年に会社とユニオン・ショップ協定を結び、会社に雇用された労働者(高校生と外国人留学生を除く18歳以上の従業員)は原則、労働組合に加入することとなった。しかし、ユニオンではクルー(当時のパート・アルバイトの呼称)で働く方達には納得して組合に加入してほしいと考え、加入活動を展開。連日、店舗で説明会を開催し、組合の必要性やメリットを訴えたが、なかなか加入が進まなかった。2160名全員の加入にこぎ着けたのは3年後のこと。「時間をかけて、ていねいにコミュニケーションを取り、納得して加入してもらったことで、その後の組合に対する信頼や組織力につながっている」と西村委員長は語る。
ボトムアップの活動目ざしパート組合員が活躍する組織へ
ユニオンでは加入活動と並行して、2015年には、どん、どん亭、フォルクス、西日本エリアの4つのグループに分け、5~6店舗ごとにエリア長(社員1名・パート1名)を配置し、現場の声を集約する体制を整えた。さらに、「クルー中央執行委員会」の構想を掲げ、自立した活動を展開し、労使協議も行えるものにするため、前段階として「クルー特別委員会」を立ち上げた。委員にはエリア長を務めるパートの仲間のなかから6名を選出。西村委員長は「ボトムアップの活動を実践し、日々お客さまと向き合い、現場を知るパートの方々が参画する組織にしたかった」と話す。以来、6名のメンバーを、仲間の相談に応えることはもちろん、活動について説明することができ、会社とも議論できるリーダーに時間をかけて育ててきたそうだ。6名はUAゼンセンの研修などにも積極的に参加してきた。
3年前には親会社が変わったことで職場環境が大きく変化し、パート・アルバイトの呼称もクルーからPAに変更された。そんななか6名のメンバーはPAの代表として声を上げ続け、業務用の靴の変更や通勤費のガソリン代の改定、まかないメニューの自己負担の改善(半額から一律300円)などの成果を積み上げていったという。
組合では特別委員会から「PA執行委員会」に変更すべく1年間の準備期間を設けた。これまで活躍してくれた6名に執行委員になってほしいと依頼したところ、皆了承してくれたという。今後は活動費が伴う役員として活動する心構えや責任、会議の運営や進行、経営への理解を深めるための財務諸表の見方などを1年間みっちり学んでもらったという。
昨年11月の大会で「PA執行委員会」を発足し、6名全員が執行委員に就任した。西村委員長は、「仕事も生活もあるなか、組合活動に前向きに取り組む姿勢は頼もしい限りです」と感謝の意を語り、「いずれは三役を誕生させたい」と期待を込める。
ユニオンでは、仕事も生活も充実し、イキイキとした毎日を送れることが仲間にとって最も重要と考え、活動を進めている。
【トップ写真】組合本部(埼玉県さいたま市)で、PA執行委員会を誕生させた思いを語る西村徹委員長