外国人労働者が増加を続けるなか、受け入れをめぐる社会の関心は高まり、実態にもとづく議論が求められています。外国人労働者が安心して働き続けられる環境の整備に取り組むUAゼンセンでは、昨年、政策サポートセンターが外国人労働者の雇用に関する調査(以下「2024調査」)を実施し、本年「UAゼンセン外国人労働者の雇用に関する調査報告書(2024年実施)」を発行(※)。9月3日、「これからの外国人労働者雇用と労働組合の対応」をテーマにオンラインセミナーを開催しました。概要をお伝えします。
これからの外国人労働者雇用と労働組合の対応―産業別の視点から
法政大学名誉教授 上林 千恵子 氏
外国人労働者の受け入れ制度が転換
日本では1990年代以降、技能実習制度を軸に外国人労働者の受け入れが拡大してきましたが、2019年に特定技能制度が導入され、「10年の就労期間を経て定住化」が可能となりました(特定技能者2号)。また、昨年始まった育成就労制度は一定期間(1~2年)を経たうえでの職場移動を認め、特定技能制度への移行を前提とした仕組みで、定住・キャリア形成を視野に入れた新たな受け入れ制度です。
短期滞在型から、定住とキャリア形成を前提とした長期的な就労制度への転換が進んでいるといえます。
2024調査では、外国人従業員と組合員が多いのは、フードサービス部会、スーパーマーケット部会、GMS部会、フード部会、ドラッグ関連部会、医療・介護・福祉部会の6部会で、全体の約9割を占めます。
外食、食品製造、介護など人手不足が深刻な分野で、外国人労働者の受け入れが進んでいることが本調査でも確認できます。
企業の存続を支える“空席補充”の役割
欧米の労働組合は、国内労働者の雇用を奪うことを懸念し、受け入れに反対する立場を取ってきました。一方で「国内労働者では補充できない職種に外国人が参入することで企業の存続が可能になる」といった“空席補充”の考え方もあります。
日本では①外国人労働者受け入れの歴史が短く、特定の職種に集まる新・旧移民間の競合が起きにくい②雇用保障が厚く、ある職種で人員が余っても配置転換などで雇用を維持できる③人手不足が深刻、といった事情から、後者の考え方は成り立ちやすいと思います。
実際、2024調査では外国人労働者の採用理由として「日本人では適当な人材が集まらない」と回答した組合が約3割にのぼり、外国人がすでに「空席補充」の役割を果たしている実態がうかがえます。
2024調査からみた組合の課題と背景
「前編」でふれたように今回の調査では、組合活動における課題として、「組合・組合活動が認知されていない」「言葉のコミュニケーションが難しい」「ニーズを把握するのが難しい」などがあげられました。
背景には、母国で組合経験がないため仕組みを理解していないこと、組合の支援を個人の好意と勘違いしてしまうこと、また母国へ送金するための節約生活から組合費を負担に感じることなどがあります。今後は外国人労働者の多様性をふまえ、国籍や在留資格、エスニシティ(民族性)、キャリア志向などの複数の軸で課題を把握する必要もあるでしょう。
ますます高まる労働組合の必要性
日本の外国人労働者受け入れ制度は、まだ定住化を前提とした仕組みとして十分に整っているとはいえません。しかし、制度的に保障されたことで、外国人労働者の定住化が進み、短期ではなく長期的キャリアをつうじて組合と関わる人が増えていくと思われ、外国人労働者にとって労働組合は重要な存在になると考えられます。こうした変化を見据えて、労働組合は対応の仕方を検討することが求められています。
(※)「UAゼンセン外国人労働者の雇用に関する調査報告書(2024年実施)」の全文および概要(調査研究レポートNo.8)は、UAゼンセンホームページに掲載しています。
