近年、闇バイトグループによる強盗事件や不特定の人を狙った通り魔事件など、物騒なニュースが相次ぎ、多くの人が不安を感じています。そこで今月号では、東急線沿線(東京・神奈川の21市区)の安全・安心を守って20年の実績を誇る東急セキュリティの仲間を2部構成で紹介します。「わが家の防犯」へのアドバイスも必見です。

施設警備

ビルや商業施設、マンションなどに警備員が常駐し、最先端の監視機器とマンパワーを最大限に発揮して異常の早期発見・対処はもとより、事故や事件を未然に防ぐ。
ホームセキュリティ

個人宅に設置したセンサーが侵入や火災などを感知すると管制センターへ自動通報され、365日24時間、警備員が駆けつける安心のサービス。
システム警備

マンション、オフィス、店舗など施設の特性に合わせた防犯システムをトータルで提供。防犯カメラの画像を遠隔監視し、非常時には警備員を急行させる。
鉄道警備

東急線各駅に配置された警備員が、駅構内の不審者・不審物の警戒を実施。さらに、急病人の対応や線路転落発見時の非常停止ボタン操作などを行う。

流行発信の地であり、若者やインバウンドで賑わう東京・渋谷。駅前の再開発のさきがけとして誕生した『渋谷ヒカリエ』は、オフィス、店舗、劇場、イベントホールなどを有する高層の複合商業施設。横山雄大さん達、渋谷ヒカリエ警備隊は、24時間体制で施設の安全・安心を支えている。

横山さんは、朝9時から翌朝9時まで、宿泊勤務で警備に携わる。館内巡回による点検・確認、出入り口の警戒監視(立哨)、出入り車両の誘導、開閉館に合わせたエレベーター・エスカレーターの起動・停止やシャッターの解施錠。また、館内の防災センターでは防犯カメラの画像確認や火災受信盤の監視業務。さらに、「一本でも紛失することは許されない」という3000本に及ぶ鍵の管理から、劇場公演の終了時には観客2000名の混雑を整理し、安全かつスムーズな誘導に努める…。ひと口に警備といっても業務範囲は実に広い。

防災センターで電話を受ける横山雄大さん。不審者発見などの緊急連絡が入ることもあり、つねに気が抜けない

万一、非常事態が発生した際は、熟知した館内構造を頭に描き最短ルートで急行する。エスカレーターの緊急停止や不審物の発覚など、日々さまざまな事態に対処する。館内で急患が発生した際は意識や脈拍を確認し、防災センターに連絡、時にはAEDを使用し救命措置も行う。奇声をあげるなどの不審者に対応することもあるという。「怖くないですか」と尋ねると、「安全・安心を守るのが私の仕事です。平常心で臨みます」と穏やかに答えた。

利用者への案内も業務の一つ。英語での案内を求められることも多く、「1時間以上日本語を使わないこともあります」と微笑む横山さん。道案内程度なら英語でできるそうだ。 

さまざまな業務に臨むなかでの心構えを聞いた。すると、「利用者の安全・安心を守ること。そのために、まず守る側である私達の安全・安心を維持することが大切です」と語った。

【渋谷ヒカリエ】渋谷の大規模再開発の幕開けとして2012年に開業。地上34階・地下4階。東急線渋谷駅と接続し自然換気機能を備える。写真:野口和宏委員長撮影

横山さんは、労働組合では書記長を務める。「私達の仕事の成果は、『安全・安心』という目に見えないものであるため評価されにくく、価格や賃金の上昇に反映されづらいのが課題です」と語る。なかには警備員を「立っているだけの存在」とみなし、心ない言葉を投げかける人もいるという。 「警備員の社会的地位の向上を目ざしたい」と語る横山さんは、積極的にUAゼンセンの仲間達と交流し、理解を広げている。「警備員として働く仲間がいることを知ってもらいたい。それが課題解決への一歩になると思います」と目を輝かせた。


渋谷をより安全・安心な街へ 警備隊の連携による警備網を構築

渋谷では駅前エリアを中心に、駅や商業施設20カ所に東急セキュリティの警備隊が常駐している。個々の施設内だけでなく建物同士をつなぐデッキ上などの警備も行う。また、警備業務を受託する渋谷地区の各物件とは無線ネットワークを形成、迷い人の捜索から非常事態発生時まで連携して対処し、エリアの安全・安心に貢献している。


東急セキュリティは20年前、ホームセキュリティ事業からスタートした。住宅に設置したセンサーが侵入や火災などの異常を検知すると、管制センターに自動通報され、警備員が駆けつけるサービスは評判を呼び、多くの家庭で導入されてきた。とりわけ昨今の防犯ニーズの急拡大を受け、問い合わせ件数・契約数ともに急増しているという。

世田谷区、渋谷区など東京北エリアを担当する矢﨑速人さん。管制センターからの出動指示に迅速に対応できるよう24時間備える


矢﨑速人さんは、ホームセキュリティの最前線を担う警備員の一人。キャリア13年のベテランだ。24時間の勤務明けに、快くインタビューに応じてくれた。 

「きのうの朝9時から今朝9時まで勤務に就いていましたが、ほとんど間断なく出動の要請がありました」と、矢﨑さんは語った。

矢﨑さんは日ごろ、東京・世田谷区や横浜市内の警備員待機所に詰めている。管制センターから携帯の端末に発報があると、食事中であろうが仮眠中であろうが装備を整え、車に乗り込む。早ければ数分、遅くとも25分以内に現場に駆けつけるそうだ。

侵入や不審者の検知は、住民の不在時や就寝時が多い。「警察と同時に現場に到着することもあります」と矢﨑さんは話す。

幸い大事に至らなくても、1回出動すると、現場で確認作業をして待機所に戻るだけでも1時間はかかる。この一昼夜、待機所で腰を落ち着ける間もなかったことが想像できた。

24時間、精神を張り詰め、肉体を酷使する矢﨑さん達の仕事のうえに、地域で暮らす人々の安全・安心が保たれていることを実感した。

横浜出身の矢﨑さんにとって、東急線沿線は子供のころから身近な存在だった。加えて、東急グループのネームバリューや、警備員が1000人以上所属する国内でも有数の警備会社であることなどが就職の決め手になったという。以来、一貫して現在の部署で、警備員として働いてきた。

仕事を続けてきて良かったと思うことは、「お客さまに感謝されたときです」と微笑む。矢﨑さんは、ホームセキュリティと併せて、「シニア見守りサービス」の契約者宅に駆けつけることも多い。室内で倒れている高齢者を発見して救急隊に引き継ぎ、ご本人やご家族から感謝されたときなどに、やりがいを感じると語る。あとから、お礼の電話や手紙をもらうこともあるそうだ。 

高齢化が進み、高齢者の一人暮らしが増える現在、防犯はもちろん、急な体調不良や転倒をいち早く察知し駆けつけてくれる東急セキュリティの最新システムと矢﨑さん達のマンパワーは、なによりも心強い存在といえる。


一層働きがいのある職場へ 勤務環境向上や“べア”獲得

東急セキュリティ労働組合は2009年に結成。「UAゼンセンに加盟している東急百貨店グループ労組、全東急ストア労組、東急プロパティマネジメント労組の先輩組合と連携して活動を進めてきました」と野口和宏委員長。2017年にUAゼンセンの仲間になると、本部主催の教育研修会や共済研修会、総合サービス部門や東京都支部の業種の会議などに積極的に参加してきた。執行部13名は全員非専従で夜勤明けや公休を利用して出席している。まさに寝る間を惜しんで活動する理由は「UAゼンセンのスケールメリットを組合員に享受してもらい、さまざまな情報を得ることで職場環境の改善につなげるため」と野口委員長は熱意を込める。

組合はオープンショップ制(労働者が組合加入を選択)でスタートし、現在、1200名超の従業員のうち組合員は165名。野口委員長は各職場に足しげく通い、現場の声を吸い上げるとともに、仲間づくりに尽力している。

野口委員長は「働きがいがあり、将来に希望が持てる職場をつくるため一層努力していきます」と意欲を込めた。

組合執行部のメンバー。後列中央が野口委員長