私達は社会のなかで、多様な人達と共に働き、暮らしています。
UAゼンセン多様性協働局が主宰する協働参画委員会では、「寛容」をキーワードに啓発活動をスタートしました。
第一弾として、啓発ポスター(上)を作成し、続いて、「寛容力のコツ〜寛容力を高める心理スキル」のセミナーを開催しました。セミナーの要旨を紹介します。
なぜ「不寛容」な世の中になったのか?
大震災、新型コロナ、戦争…“時代が「不寛容」になっている”

人間は、もともと「寛容」ではなかった。私達の祖先は、原始時代から、身の回りに起こるさまざまな危害をハネのけることで、生き延びてきた。
では現代はどうか。想定外の災害や新型コロナ、戦争など、不穏な世の中で、人々はギスギスし、つねに漠然とした不安を抱えて生きている。生活レベルは豊かになったが、期待値も高くなり、ちょっと期待がはずれると腹を立てる。さらに、ネットで怒りを拡大するetc…。
このように“時代が「不寛容」になっている”といえる。
パワハラ、カスハラ、マタハラ、モラハラ…ハラスメントが頻発する社会

近年、さまざまなハラスメント(嫌がらせ、いじめ)が注目されるようになった。
ハラスメントは、被害者のメンタルヘルス(心の健康)に大きなダメージを与えるだけでなく、SNSなどで世論が被害者の側に付くと、会社や組織の存続も危ぶまれる事態になる。つまり、双方が傷つくことになる。
いまこそ、ハラスメントのない、「寛容な社会」が求められている。
「寛容」でありたい — 多くの人の願い
寛容になるために私達にできることは—
寛容力を養うコツ①
感情をコントロールできない原因を知ること
感情が爆発する原因は
蓄積疲労
ストレスを受けたとき、過剰に反応する人と冷静に対応(スルー)できる人がいる。その差はどこにあるのか。鈍感力?、我慢強さ?、ストレス対処法を持っている?。実は、感情のコントロールに最も大きな影響を与えているのは、蓄積疲労だった。
感情は、強く出るときと弱く出るときがある。蓄積疲労があると、同じ刺激でも感情は2倍、3倍になる。理性ブレーキが効くのはぎりぎり黄色モードまで。あなたは青、黄、赤、どのモードだろう。




◎感情をコントロールできるのは青モードのときだけ
感情はコントロールできるものと思っている人は、「人」をよく知らない

◎蓄積疲労が3段階(赤モード)になるとうつ症状が出る
寛容力を養うコツ②
ステルス疲労の蓄積に注意
現代人は自分でも気づかないうちにうつ状態に
蓄積疲労は、3カ月から半年、1年以上かけて、知らないうちにため込まれていく。原因は大きく二つ。
①感情の消耗
パワハラが発生した部署では、所属する10人全員がメンタルダウンした。被害者が罵声を浴びせられるのを毎日聞いていたことで感情が消耗し、極度の緊張が続いて、うつになった。
②環境の変化
出張や転勤は大きなエネルギーを使い、うつ状態が悪化する原因となる。昇進や結婚、出産など、おめでたいことでも、ステルス疲労が蓄積する可能性がある。

◎うつ症状にある人は自信の低下、無力感が2、3倍に
一方、他者への許容範囲は2分の1、3分の1に=不寛容
現代人はうつ状態の反応として不寛容になっている
パワハラなどへの論理的・法律的指導の限界
パワハラをする人に、論理的指導によって改善を試みても効果がない。なぜなら、パワハラをする人の多くは2段階疲労以上(黄色か赤モード)で、理性ではなく感情によって行動するため。
<蓄積疲労によるうつ状態の人の不適応拡大の構造>
自信が低下すると、相手を攻撃して自信を取り戻そうとする。視点の偏り(自分は正しい)や正当化によって、攻撃を繰り返す。
ハラスメント予防に最も効果があるのは
↓うつの悪化予防(疲労のケア)
うつの悪化を防ぐ疲労ケアの基本
①離れる
距離的・時間的・イメージ的に離れる
*パワハラ上司が長時間説教を始めたら、トイレに立つなど、部屋を出るのが一番。距離的に離れることができない場合は、話を聴いているふりをして、頭の中で違うことを考える(イメージ的に離れる)。
*攻撃的な対象から離れるだけでなく、エネルギーを使う行為(感情をたくさん使う行為)から離れることが重要。
②睡眠・休養
悩んだら、つらくなったら、睡眠を多く取る
*うつ状態では、“眠れない”“熟眠感がない(ぐっすり眠れた感じがしない)”のが当たり前。また、うつ状態になると、夜眠れず、朝出勤できなくなることが多い(昼夜逆転)。
*大切なのは、寝られなくても、寝る時間を確保すること。
*思い切って仕事を休み、9時間睡眠を続けて回復した例もある。
③相談する
専門家(カウンセラー)に頼る
*メンタル不調を少しでも感じたときに、周囲の安心できる人に話を聴いてもらうことができると、その後の復活につながりやすい。
*自信がある人ほど対応が遅くなり、ポジションが上の人ほど助けを求めにくい。また、頑張りすぎると長引いてしまう。うつになると冷静な判断ができなくなり、ネガティブに考えてしまうため、専門のカウンセラーに相談し、アドバイスをもらうことが大切。
寛容力を養うコツ③
人に対して適正な期待を持つ
周囲に対する期待値を下げる
人は感情をなかなかコントロールすることができないもので、とくに疲労によってうつ状態にあるときには、感情が理性を上回ってしまう。だからこそ、寛容でいるためには、人の道徳心や良識に期待するよりも、自分のエネルギーを上げていくこと(疲労のケア)が重要となる。
上司の年代の価値観からすると、「以前と比べて、人が脆弱になった」「若い人に積極性は期待できない」と思えるかもしれないが、それでいい。周囲に対する期待値を下げ、適正な価値観を持つことこそ、寛容力を養うコツといえる。

