全千葉薬品労働組合 園部 枝里子 さん
職場の仲間と心を通わせ、仲間の思いを力にして、より働きやすい職場づくりに情熱を傾ける園部枝里子委員長(写真右)
ヤックスケアタウン大網増穂店は、ドラッグストアをはじめ、調剤薬局、デイサービスセンター、ヘルパーステーション、ケアセンターを有し、トータルで地域の生活をサポートしている

仲間の思いや悩みに応え より良い職場づくりに取り組む

仲間の思いを背に交渉に臨み ベアと定昇改善分の獲得を実現

「全千葉薬品労働組合の園部枝里子さんは、昨年委員長に就任したばかりだが、懸命に活動に取り組んでいる」と、UAゼンセン千葉県支部から聞き、さっそく連絡を取った。 園部委員長は忙しい時間をやり繰りし、「賃上げについて職場委員会を開催し、翌日に団体交渉を行います。そこにもぜひいらしてください」と、取材の手はずを整えてくれた。

調剤薬局には車に乗ったまま薬が受け取れる窓口も設置

7月初旬、職場委員会に伺うと、園部委員長がにこやかに迎えてくれた。朗らかで周りを温かく包む思いやりに満ちている。職場委員の皆さんが信頼を寄せている様子も伝わってきた。委員会では、「今回はベースアップ(ベア)に加え、定期昇給(定昇)の改善分にこだわり交渉したい」と訴え、仲間の声に耳を傾けていた。全員一致で公正な定昇制度の確立へ向け、改善分を要求することを確認した。 翌日、本社に同行すると、皆、気さくに声をかけてくる。ここでも慕われている様子が分かった。休憩室で男性が「住宅手当を上げてくださいよ」と話しかけると、ていねいに組合の考え方を答えていた。その後、仲間の思いを背に園部委員長は団体交渉に臨んだ。交渉を終えると、「ベアと定昇改善分の金額を獲得できました」と晴れやかに話す。さらに「一歩前進しましたが、引き続き労使協議で配分を詰めていきます」と力を込める。

デイサービスではショッピングによるリハビリを行い、利用者の方やご家族に好評を得ている

千葉薬品は、千葉県を中心に茨城県などに「ヤックス」の名称でドラッグストア、調剤薬局、スーパーマーケットなどを135店舗展開。また、ドラッグストアにデイサービス施設を併設するなど介護サービス事業も展開し、地域の人々の健康と暮らしを支えている。

「人と接することが大好き」と語る園部委員長。高校、大学時代はコンビニ、食品スーパー、ホームセンターのアルバイトをかけ持ちするほど接客業にやりがいを感じていたという。大学時代は就職氷河期で就職がままならず、卒業後はアルバイト先のホームセンターでパート社員として8年間勤務した。その間、登録販売者や医療事務などの資格を取得しスキルアップに努めた。

団体交渉の模様。園部委員長は仲間の思いを届け、鋭意交渉に努め、ベアと定昇改善分を獲得

勤務先の閉店の可能性に伴い、就職活動を行っていた際に、千葉薬品に正社員で入社することが決まった。ドラッグストアで3年間経験を積んだ後、コンビニでの経験を買われて、「ファミリーマート+ヤックスドラッグ浦安東野店」のスタッフとして奮闘した。その後、商品部へ異動になったものの、「力が発揮できず心が折れました」と当時の様子を赤裸々に語ってくれた。ふたたび浦安東野店勤務になると、話題の商品や店の特徴をSNSで発信し、売り上げアップに貢献したそうだ。「自信を失った後だけに、お客さまからの支持がうれしかった」と振り返る。

交渉後に笑顔で握手を交わす様子

多くの仲間が参加・参画する労働組合を目ざし情熱を傾ける

会議や研修に参加し経験を積み重ね 一層働きやすい職場を目ざす

園部委員長は入社後、同期の仲間を集め、飲み会のサークルをつくり、定期的に30人ほどが参加し懇親をはかっていた。“人を集める力”が当時の委員長の目に留まり、執行部へ誘われ、2017年から執行委員に。レク活動を担当するなか、組合活動の楽しさを知った。さらに副委員長に就任し、千葉県支部の男女共同参画委員会に出席すると、世界が変わったそうだ。「企業の枠を越え、情報を共有し、組合員を守るために協力し合っていることに感動しました」と話す。仕事と組合活動に力を注ぐなか、昨年、前任の鈴石聖岳委員長(専従)が職場に戻ることになり、伊原輝人副委員長(当時)と清水尚雄書記長の3人で話し合いを行った。2人の事情を考慮し、「私がやるしかない」と委員長になることを決意したそうだ。その背景にはおじいさんの教えが影響していたという。「祖父は労働組合の専従の役員を長年務めていました。つねづね『困った人や弱い立場の人には寄り添わなければならない。思いやりを大切にしなさい』と教えられていました」。そうして昨年10月の定期大会で委員長に就任し、清水書記長との専従2名体制をスタートした。

組合では新入組合員を迎え、毎年6月に入組式を開催。ことしは初めて会社(ダイバーシティ部)のメンバーとプログラムを考え、合同で開催し、72名の新しい仲間達を歓迎したそうだ
UAゼンセン千葉県支部が開催している地引網のひとコマ。園部委員長は仲間に参加を呼びかけ、家族含め47名が参加した
5人以上参加のサークル活動には組合から補助金を支給。現在、約40のサークルが活発に活動し、仲間のつながりを深めている

以降、知識と経験を増やすために、千葉県支部をはじめUAゼンセンの会議や研修に参加し、連合からの参加要請にも時間が許す限り応えてきた。周りから「少しペースを落としては」と言われるほど、貪欲に突き進んできた。これはひとえに一層仲間が働きやすい職場にするためにほかならない。一方、清水書記長は、「5月から1カ月半、育休を取得させてもらいました。その間、委員長が一人で尽力してくれました」と感謝する。

組合の専従は委員長1名だったが、昨年10月の定期大会から園部委員長と清水書記長の2名体制がスタート。2人で力を合わせ活動を進めている。機関誌『スクラム』(左)の作成にも力を注ぎ、情報発信に努めている
7月2日、千葉県支部の会議室で開催した職場委員会には、田村まみ組織内参議院議員が駆けつけ仲間を激励。園部委員長達は執行部で手づくりしたうちわで歓迎し、田村議員の国政報告に耳を傾けた

最後に園部委員長は目標を語ってくれた。「店舗は24時間営業のため、夜間の店舗回りを実践し、仲間の悩みを吸い上げ、労働環境の整備に取り組むこと。ベアを獲得し労働条件の向上に努めること。教育に力を入れ、多くの仲間に参加・参画してもらうことです」。この思いを胸に、着実に前進している。

2月にはUAゼンセンの新任役員研修会に参加し、組合活動に必要な基礎知識を学んだ
企業の枠を越えた仲間同士の交流やサポートに「助けられている」と感謝する園部委員長
漫画『銀魂』に魅了され笑顔になるときを過ごす
漫画『銀魂』は、何気なく見たアニメがきっかけで、その魅力にどっぷりハマってしまったそうだ。「嫌なことがあっても忘れてしまえるくらい笑顔になれる作品です」と語る

園部委員長の癒しの一つは漫画『銀魂』を読むこと。「主人公達の芯の強さと折れない信念のカッコ良さに憧れる」と話す。ハマり過ぎてイベントやグッズなど推し活に精を出してきたが、『銀魂』をつうじて多くの人と出会えたことに感謝しているとも語る。